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「も、う……秋人さん、休憩……」
「んー?……そうだねぇ」
グズグズに香乃を溶かして、津城は飽きることなく香乃の肌に触れて時間を過ごした。
翌朝、津城に抱かれて目を覚ましてから。
外の天気はあいにくの雨で。
シトシトと振り続ける雨に、結局入ることの無いプールに波紋が止まることなく拡がっている。
ベッドで、朝食を摂ったソファーで。
汗を流そうと入った風呂で。
津城は片時も香乃を離さなかった。
そして今、二日目の夜だ。
僅かな間接照明だけのベッドの中で、また抱かれている。
ゆったりと揺蕩うだけの揺れと、止まない津城の視線。
独占欲と、愛欲と、慈愛。
時々口移しで水を飲まされて、もう津城との境目が無くなったみたいだった。
肌のあちこちに紅い花が咲いて、痺れて熱い。
「香乃」
津城の背中に触れて、撫ぜる。
休みたいと悲鳴をあげる身体が、それでも津城を求めている。
香乃がずっと触れたかった背中を開け渡した津城は、ひたすらに甘く、優しく、我儘に香乃を絡めとって。
満喫するはずの部屋に意味は無かったと香乃はぼんやりと思った。
それは、これからだって変わらないだろう。
二人きりだったあの家でも、まだ知らない邦弘の家で過ごす日々も。
津城の腕の中は、何処に居たって変わらない。
温かくて、安心して。
それがどれだけ過酷な場所でも、例え火の中でも。
香乃にとって必要なのは、この場所だけなのだ。
畳一畳あれば事足りる。
津城もそう思ってくれていると、今なら思える。
離れて、焦がれて、求めた。
二人で繋ぎ合わせた幸せが、今指を絡めた手の中にある。
着流しと猫と。2 【完】
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