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実のところ、判断材料がないわけではない。
そもそも私は流美の双子の姉なのだ。普段からたくさん喋るしたくさん遊ぶ。彼女のことなら一番よく知っていると言っても過言ではないはずだ。
よって翌日の学校でまず確認したことは――流美と同じクラスの子に聴きこみをすることだった。
舞阪珠理ちゃん。彼女は去年私と同じクラスで、一番仲が良かった女の子の一人である。話を聴くにはもってこいの相手だった。
「あー、それ、うちも何か変やと思っててん」
関西人の母親の影響で、すっかり喋り方が関西人っぽくなっている彼女は苦笑して言った。
「流美ちゃん、足速いやろ?運動神経も、クラスでトップクラスにええ。それなのに、今年サッカークラブのマネージャーになるって言いはって、なんや妙やなと」
「サッカーが好きだからマネージャーになるってのはあるんじゃないの?」
「せやけど、流美ちゃんなら自分がサッカークラブの選手やるって言いそうなもんやろ?なんで選手やなくてマネージャーなん?って思わん?そもそも、うちの学校で練習してるトコエサッカークラブって、元々マネージャーなんていなかってん。それを、流美ちゃんが無理矢理頼んでマネージャーにしてもろうたんって話」
「ふんふん」
流美は運動神経が良い。サッカー経験はなかったが、体育の授業でサッカーをやった時はストライカーばりの活躍をしていた。ドリブルは一人前以上にできたし、そもそも足が速いわキック力があるわ体も大きいわで活躍の場が多かったのである。一昨年同じクラスで体育の授業を一緒にやった時は本当に楽しそうだった。サッカーに興味がないとは思えない。
それが、わざわざ選手ではなくマネージャーになった理由はなんだろう?
サッカークラブに好きな相手がいるだろうというのは想像に難くないが、きっとそれだけではあるまい。選手だって、並んでプレイする喜びがあるはずなのだから。もっと言うと、流美は私よりも不器用だ。裏方仕事に向いているタイプとは思えないのだが。
「……トコエサッカークラブって、レベル高いの?私はちらっとしか見たことないからわからなくて」
私が尋ねると、いんや、と珠理ちゃんは首を横に振った。
「全然強くないで。小学生だけのクラブなんやけど、下級生も多いしな。でもって、初心者でも楽しくわかりやすく、みたいなんがモットーやから……全体としてのレベルが高いわけやない。まあ、公式試合には普通に、実力順でメンバー選出するみたいやけど」
その言葉で、私はピンと来た。
元々レベルが高いわけではないサッカークラブ。そこに、流美が入ったらどうなっていたか?
恐らく、彼女はレギュラーをかっさらっただろう。小学生のクラブだから、男女混合でプレイすることになる。彼女がレギュラーになったなら当然、別の誰かが外れることになるわけで。
そう、外れるとしたら、彼女が入ったポジションの人間になるはずだ。
「……私はサッカーのこと、そんなに詳しくないんだけども」
記憶を手繰り寄せる。一昨年同じクラスになった時、流美はどのポジションでプレイしていただろうか?
「ミッドフィールダーって、難しいポジションだよね?全体を見回さないといけないし、司令塔もやらないといけないし」
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