ある正月の、なごみ‥‥消えた

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 服を着替えてからキッチンに立ち、お茶を沸かした。  涼造が入院中、娘が買って置いてくれた小餅を三個、それぞれ四っつに切った。  数年前に他界した妻から教わった手順を思い出しつつ、薄味の雑煮を作った。 「匂いは、まぁまぁだな‥‥」  その一部を小皿にとり、四切れの餅を加えてから仏壇の妻の遺影に供え、 「きょう退院したよ。お前と同じ病院だったが、発見が早かったことと、いい先生だったから‥‥。それから雑煮を作ったけど、不味いからって夢に出るなよ」  苦笑してから合掌した。
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