ある正月の、なごみ‥‥消えた

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 童話に『みにくいアヒルの子』というのがあるが、涼造にとってユイは、みにくい白鳥の子……いや、白鳥よりも真っ白な子だった。  彼が入院して数日後の日曜日、一家で見舞いに来てくれたことがあった。可愛いユイは、慣れない病院の雰囲気に戸惑いながらも、ゆっくり起き上がった彼に、 「おじいちゃん、だいじょうぶ?」  と心配そうに聞いてくれた。  涼造の目に涙が溢れていた。しかし神様は、本当にひどい事をするものだ。  彼はその日、初詣でに行く予定をしていたが、どうしようかと迷っていた。  が、初詣でに行って、ユイの冥福を祈ってやるのも一つだな……と思った。 彼はユイの年賀状を上着の内ポケットに仕舞い、出掛けることにした。 初詣といっても、徒歩十分ほどの所にある小さな神社だった。
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