魔界の実は煮詰めた柿で代用できる

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 さまざまな地を転々としたのですが、地球での生活に落ち着きました。  地球にはリタイア後に田舎でのんびり暮らすというライフスタイルがございまして。常に気を張っている我々悪魔からすると、そんな悠長なことをしていたら体が鈍ったり最悪の場合は不意打ちで殺されるので信じられないかもしれません。しかし、いやいやどうしてどうして非常に健康的な生活なのでございます。日本では殺し合いに巻き込まれる心配もそうございませんから。かつては戦国時代というものがあったそうですが。  大魔王様が引退なされたと聞き嘆かわしさもありましたが、これを機に新たな生活をなさってみてはいかがかと思い、不躾ながらLINEでご連絡させていただきました次第でございます。  もしご興味がございましたら是非私めにご案内させて頂きたく存じます。 追伸  私が辞任する際、大魔王様から頂戴しました魔界の実の種は日本の地で順調に育ちまして、ただいま私の身長をゆうに超えるほどの木になりました。こいつに水をやるのが毎朝の楽しみでございます。それでは失礼いたします』  という一通のLINEが届いた。  さらにもう一通、静止画も送られてきた。グスタンディヌスと、側に大きく成長した魔界の実の木が写っているものだった。  眼力で相手を殺すほどの鋭い眼光をしていたグスタンディヌスは目尻が垂れて穏やかな表情をし、嬉しそうに木を触っていた。  人は変われるというが、悪魔も地球に行けば変わるのだなぁとザバジはしみじみ思った。  これまで私は幾千人もの伝説の勇者たちと対峙してきた。伝説の勇者たちは私を倒すために多くの仲間を引き連れ挑んできた。大勢の仲間を引き連れて来るとは卑怯極まりない戦い方であるが私は部下の助太刀を拒み、一人で正々堂々とその真剣勝負に挑んだ。そんな日々の中に心休まる日など1日たりともなかった。卑怯者の勇者たちとの死闘の数々は間断なくやってきて倒しても倒しても新たな勇者が誕生し、またそれを倒し、私は身も心もボロボロだった。そのうちに国力は弱まり、追い打ちをかけるように失脚劇。  確かにもう疲れた。試しにのんびり暮らしてみるか。  ザバジはグスタンディヌスと連絡を取り、地球の小国日本に赴くことにした。  魔界から地球に行くには魔界と地球を結ぶジェット機の直行便が出ており、それに搭乗すればすぐである。しかし最近の魔界の不景気によりジェット機は高い。それなので宇宙船に乗り何十時間もかけて地球を目指さなければならなかった。
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