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「ジェット機がこう高くては地球に来るのも一苦労だ。この帝国の経済を弱らせた私の責任でもあるのだが。それにしてもグスタンディヌスはまだか」
宇宙船で地球に到着後私はひとっ飛びでグスタンディヌスとの待ち合わせ場所のとある漁港に着いた。せっかくなのでそこで軽く食事でもと宇宙船の中で思っていたが、想像以上に辺鄙な漁港だった。
「待ち合わせ場所に指定するくらいだからもっと活気のある漁港かと思っていたがあいつはこんなに不便そうな街に住んでいるのか」
「大魔王様大魔王様」
遠くの方からグスタンディヌスが口から歓喜の炎を吐き吐き駆け足で私の元に近づいてきた。そして私の元まで来ると両膝をつき深々と頭を下げた。
「お待ち申し上げておりました」
「良い良い。頭をあげい。私もお前も既に魔界を引退した身。同等の民よ」
「しかし」
「そんなことより飯でも食わぬか?この辺で食事ができる所はないか?」
「この辺りに食事処はございませぬ。もしよろしければ私めがご用意致します」
「おぉ、それは心強い。では早速魔界の実が食べたい。お前が庭に植えていたあの魔界の実を。帝国が衰退してからというもの、なかなか贅沢ができなくてな」
「大魔王様、魔界の実はそんな簡単に実りませぬ」
「何と?」
「ここは地球でございます。魔界とは環境が違いすぎますし、そもそも魔界の実は種を植えてから最低10年はかかります」
「そんなに待てぬわ。さっさと持ってこい」
「大魔王様、御言葉ですが自然には逆らえません。いくら大魔王様が食べたいとおっしゃっても実が生らないものはどうしようもないのでございます。我々がいつも食していた魔界の実は、農民やそれに携わる者たちの努力あってこそいつでも食べられたのでございます」
「育たぬならもう生っている魔界の実を持っている者がおろう。そいつから奪ってくるが良い」
「大魔王様の命令とあらばいざ。昔の私でしたらそう思いましたが今は違います。魔界の実を栽培している者たちはそれを生業としているのです。魔界の実を実らせてそれを売る。そんな売り物を奪ったらどうでしょう。もし私が丹精込めて立派に実らせた魔界の実をどこぞの者に奪われてしまったらどんなに辛いでしょう。娘を殺されるくらいショックです。大魔王様も一人娘のザナティー様を何処の馬の骨かもわからぬ者に奪われたらどうです?男手一つで育てたザナディー様をですよ」
「言うな。考えたくもないわ」
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