魔界の実は煮詰めた柿で代用できる

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「帝国時代では想像もつかない発想です。あの頃は無駄な時間がもったいのうございました。無駄な時間を使うくらいなら勇者一人殺すことに時間を費やしておりましたから。しかし今は勇者に時間を費やすことが無駄であるという思考になりました」 「もしも今勇者が現れたらどうするのだ?」 「そのときはそのとき。ケセラセラでございます。現れてもいない勇者のことを考えて武装するのは心身ともに良くないかと」  ザバジは感心したように頷いていった。 「グスタンディヌスよ、丸くなったな」  魔界の実もどきをたらふく食べたあと庭先に何やら吊るしてあるものがいくつもあった。よく見るとそれは魔界の実を干したもので熟成されてちょうど食べ頃に見えた。 「やや?これは本物の魔界の実ではないか?」  ザバジが驚愕して言うとザバジとは対照的にグスタンディヌスは無表情で「左様でございます」と答えた。    「いや、左様でございます、ではない。お前は作れないと申したではないか」 「実は、魔界の実はもう収穫済みでございます」  彼は包み隠さず告白した。 「何?収穫済み?どう言うことだ?」 「この地域は非常に肥沃な土地でして、悪の帝国では10年かかった農作物がこちらでは1年で出来てしまうのです。ここは四季というものがございまして魔界の実に適した気候と、水と、」 「うるさいうるさい。ではやはりさっき食べたのは本物の魔界の実だな。なぜ私を騙した?」  ザバジは怒りで戦慄いていた。 「騙してはいません。大魔王様が召し上がった物は間違いなく魔界の実もどき、柿でございます」 「ではなぜ魔界の実を出さぬのだ?私にくれてやるのが勿体無いからか?」  グスタンディヌスは激怒しているザバジを見つめて笑顔で言った。 「決してそのようなことはございません。ただせっかくこの地にやって来たのですから、大魔王様にもこの田舎暮らしの楽しさを知って頂きたくてこのような真似に至りました。お許しください。しかし大王様、魔界の実もどきをとても楽しんでいらっしゃったように存じますがいかがでしょう?」 「確かに趣はあった」  激怒していたザバジは堪えきれず表情が緩んだ。 「そうでございましょう大王様。これはもう田舎の生活に溶け込んでいらっしゃる証拠でございます。私も嬉しゅうございます」   かつての一国の主が見せた姿にグスタンディヌスの心の中は小躍りしていた。 「大魔王様もここで暮らしてみませんか?」 
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