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私はかつて全宇宙を震撼させる『悪の大魔王』だった。
我々悪魔を迫害しようとする勇者どもに対して鉄槌を下すことにより、正義は滅び悪は栄え我が悪の帝国は絶頂期を迎えた。そして私は悪の大魔王となった。しかし・・・
貧しい悪魔の家系に生まれ育ったザバジは、悪魔としての圧倒的な残虐性を持ち合わせていたが、それとは対照的に勉学に関して非常に熱心に取り組む姿勢があった。あまりにもその姿勢が真剣だったのでこの子は本当に悪魔の血を引いているのだろうかと両親が疑うほどだった。
幼少期からひたすら読書に耽り周囲から異端児扱いをされながらも残虐性を失うことはなく、誰かの悪口を言う悪魔がいたらそいつの目玉をくり抜き片手で握りつぶしてはその潰した目玉を元の位置に戻して虐めていた。それなので潰れた目玉をしている悪魔がいたら皆ザバジにやられた証拠だった。
成人するとその異端児ぶりと残虐性、そして豊富な知識が認められ国家の機密組織に配属されることになる。悪の帝国では『怠慢、謀反、強奪』が当然の原則だった時代にあって、彼は『仲間、信頼、栄光』と言う悪の帝国では耳慣れない原則を掲げ、『正義には鉄槌を』と言うスローガンの元、悪魔は皆仲間で信頼し協力して勇者に勝ち栄光を掴もうと国民に説いた。その後帝国の異端児として政界に進出し瞬く間に宇宙を震撼させる指導者にまで上り詰めた。そんなザバジの勇姿に惹かれ、大勢のザバジ支持者の悪魔たちが帝国に移住してきて国力は強まっていった。
しかし繁栄もそう長くは続かなかった。権力を持ち過ぎた政治は腐敗し帝国民は政治に不満を持ち暴動が起こった。悪魔たちによる暴動は一国を滅ぼしかねないほどの暴れっぷりだったため、ザバジが帝国の大魔王を辞することでどうにか収めた。
失脚した。私は大魔王を失脚した。これからどうやって生きていけば良いのだ。過去の栄光に縋るつもりはない。しかし、もやもやしたものがこびりついて離れない。
そんなとき、私の側近として仕えていたグスタンディヌスから突然連絡がきた。グスタンディヌスは私が失脚する数年前に国民の暴動が起き始めた頃、責任を取るといい辞表を寄越した。しかし非常に有能な部下だったので私は何度も引き留めたが、彼の決意は固く職を辞することになった。
そんなグスタンディヌスが私に何の用だ?
『ご無沙汰しております。グスタンディヌスでございます。
その節は大変お世話になりました。
私めは参謀を辞任いたしましたのち一人流浪の旅にでました。
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