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キイロの説得
「え、ええ~!!!ミドリ~???シロじゃなくて~!!??」
「シロには色人のゴタゴタには絶対に参加しないとクギ刺されてるし、シロのアジトよりミドリのアジトの方がここから大分近い」
「え、ええ~・・・・・」
「俺がアイツを引き付ける。その間にお前がミドリを説得して連れてこい。森にはたくさんの緑がある。資源の点でチャイロが有利なのは変わらないが、ミドリの力を借りればアイツを倒せるかもしれない」
「む、無理だよ~!あのミドリだよ~!?僕の言うことなんて・・・」
「俺よりお前の方がミドリを説得できる可能性が高い。このまま三人でこの広い森を抜け出すのは無理だ」
そうこう話していると、急に地面が大きく揺れた。
「なに・・?地震!?」
「・・・チャイロが俺らを探してる・・・俺たちはとりあえず避難するぞ・・・キイロ、行け!!」
「~っ・・・・・」
キイロは納得できない顔をしながらも、アオとは別方向へ走って行った。
キイロと別れたアオとあかりは、大きな木のふもとにたどり着いた。
巨大な木のふもとの中は空洞で、人が一人入れるほどのスペースがあった。今は夜で森の中にはもちろん街灯もない。奥まで入れば、外からはほとんど見えない。
「・・・あんたはとりあえずここに隠れてろ。絶対動くなよ」
「・・・え、でも」
「下手に逃げ回るとまた捕まる。ミドリがくるまで、アイツは俺が相手しとく」
「・・・・・・」
「あと、これ」
「・・・・?」
アオはポーチから赤の絵具を取り出し、あかりへ差し出した。
「いざという時のために。小さいのしか用意できなくて悪いけど。じゃあな」
「・・・・・・ま、待って、一人にしないで」
「・・・・・・・」
あかりは震える手でアオを引き留めた。
「こ、こんな暗い所で一人でいられない・・・・そ、それに、もし、あなたが死んだら・・・・」
「俺は死なない」
「そ、そんな保障・・・・」
「あんたも死なない。あんたをこんな事で死なせるわけにはいかない。・・・絶対に」
そう言って、アオはあかりの手を強く握った。
「アオ・・・・」
すると、また森の奥の方から音が聞こえた。
「絶対声を出すなよ」
そう言い残し、アオはチャイロの元へ向かった。
「・・・アイツラハ何処へイッタ?」
「逃がした。俺を殺してから探せ」
「・・・ワカッタ。ドノミチ、オマエハジャマダ」
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とある場所の豪邸。つい一カ月前までは、ある有名な資産家が住んでいたが、高齢で亡くなり、今は誰も住んでいない。居住者がいない為に取り壊す予定ではあるが、遺族が相続で揉めているため、裁判の決着がつくまではそのままらしい。
ミドリはそこを住処にしていた。
色人は食べ物には困らないが、さすがに雨風はしのげない。しかし、アオやキイロのような汚い廃墟に住むのは嫌だったため、こうして人が住んでいない、なるべく見目良い事故物件にしのびこんでいる。
事故物件なだけあって近所の人間は誰も家には近づかないし、もし後で居座っていた形跡がバレても、戸籍のないミドリが捕まることはない。
「・・・今日はショパンでも聞きマスカ」
まだ電気は止めてないらしく、家の家電を使わせてもらっていた。
前の住人の趣味であるらしいレコードを取り出し、レコードプレーヤーにレコードをセットしていると・・・
「ミドリ~~~~~!!」
ボロボロ姿のキイロが窓を破って侵入してきた。
「なっ・・・・!?」
「いた~!良かった~!来て~!」
キイロはミドリの腕をつかみ、外へと強引に誘導してきたが、ミドリはさっぱり意味がわからなかった。
「ドコへ?!とゆうか、お前はどうしてココニ?」
「ミドリがここにいると思って~!」
「何故わかッタ?!」
アオやキイロがアジトをバレないようにしていたように、ミドリも他の色人に住処がバレないように細心の注意を払ってきた。なのに、キイロにあっさりと見つかってしまっていた。
「ああ、ごめん~、実はミドリの靴に発信機つけてたんだ~。ハカセが僕たちにつけてたやつ~」
「発信器?!私二!?イツ!!」
「前に僕たちの工場燃やされたときにアオが~・・・」
「・・・・・・・」
ミドリはあのときの状況を思い出した。
(あの時、発信器つけられるようなスキは・・・・)
確か、消防車のサイレンが聞こえて逃げようとしたときに、アオに足を捕まれた。もしや・・・・
「あの時二・・・!?」
確かにあんな状況で引き留めるような行動をしたアオの意図がよくわからなかった。だが、発信機をつけるためだと考えると・・・
(私に蹴り飛ばされることも計算済デ・・・・・!!)
「アノ小僧~~~~~!!」
「ご、ごめんミドリ~。でもそれより今大変なんだ~、一緒にきてほしんだけど~・・・」
「ハ?何故?ドコへ?」
「チャイロがあかりちゃん誘拐しちゃって、森に連れ込んで、今アオが助けてる~。でも、どうしても不利だからミドリ連れて来いって~」
「ハアア?」
「ほ、ほらミドリもあかりちゃん狙いでしょ~、ここであかりちゃんがチャイロに殺されたら人間なれないよ~?!」
「・・・・・・・・・」
キイロの提案を、ミドリは鼻で笑った。
「フフフ。私もバカにされたものデスネ」
「え~?」
「そうやって焚きつけておいて、どうせチャイロをどうにかできてもその後あなた達が妨害するでしょうガ。それとも私にあの娘を差し出すのデスカ?」
「~~~それはぁ」
「フン。自分たちでなんとかシナサイ。私は知りまセン」
「~~~~お、おねがあい~ミドリ~!」
「うるサイ!大体私はあなたたちが嫌いなんデス!」
「・・・・・・!」
キイロは目を見開き、ミドリは豪華な椅子に座ってふんぞり返った。
「・・・・で、でも~、ぼ、僕はミドリのこと、き、嫌いじゃないよ~」
「嘘ツケ!一番嫌ってたクセニ!!」
「な、何でわかったの~!?」
「・・・・・・・」
「ミドリ~お願」
懇願するキイロの横の壁に尖った草が突き刺さった。
「・・・・・!」
「出ていかないと、次は顔を狙いマス。・・・・まあ、あなたには前回の借りがあるので、今回は見逃してあげマス。さっさと去りナサイ」
「・・・・・・」
「それとも、力ずくで連れていきマスカ?あなたのその弱っちい能力デ?」
ミドリは立ち上がり、キイロと対峙した。
「・・・・・・・」
キイロは震えながら、ポーチに手を入れた。
「手が震えてマスヨ」
ミドリは溜息をついた。
「・・・・・・・!」
キイロは床に両手をついて、土下座の姿勢をとった。
「・・・・お願いします~・・・!何でもいうこと聞くから・・・、アオを、・・・あかりちゃんを、助けて・・・ください。お願いします~・・・・」
キイロは涙声で懇願した。
「・・・何故デス?」
「・・・え・・?」
「どうして、そこまでしてあの人間を助けるのデスカ?あなたも、アオも」
「・・・あかりちゃん・・・は、アオが守れって・・・言ってた、から・・・」
「・・・ていうのも、ある、けど~・・・」
「ケド?」
「僕自身も、あかりちゃんが・・好きだから」
「・・・・・・」
「あかりちゃん、お母さんがあんまり働けなくて、代わりに働いてお金稼いでて、絶対、大変なはずなのに・・・グチ・とか言わずに頑張ってて・・・」
「しっかりしてて・・でも優しくて・・・」
「よくわかんないけど、本当に、わかんないけど、」
「もし、もし僕に・・・家族・・・お姉ちゃんがいたら、こんな感じ・・なのかなって・・・」
「・・・・・・・・」
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