クロの感情

1/1
前へ
/39ページ
次へ

クロの感情

あかりはクロを裏庭まで連れ込んだ。 (・・ここなら誰もいない・・) 走ったせいで息切れしているあかりに比べて、クロは息一つ乱してなかった。 「・・・・ク、クロさんどうしてここに?」 「あかりんがどんな生活してるか気になって見に来たっ」 そう言って、クロは物珍しそうに辺りを見渡した。 「そ・・そう。でも、ここは生徒以外来ちゃダメな場所だから」 「あ~だからアオ達はいつも入ってこないんだねっ」 「・・・・・・・・・」 悪びれないクロの様子に、あかりは頭を抱えるしかなかった。 「クロ、あかりんに聞きたいことあってさっ」 そう言って、クロは真剣な顔で、あかりに近づいてきた。 「・・・・なに?」 「・・・シロのこと、どう思ってるっ?」 「シロさん?」 「好きっ?好きだよねっ?あんな強くて優しいんだもんっ。きっと、」 「・・・いや、好き、じゃないよ」 「えっ、じゃあ嫌いなのっ?」 「えっと、嫌いじゃないし、良い人だと思う。えっと・・・人として好きに近いけど、その・・クロさんの好きとは違う種類っていうか」 「え、え、どうゆうことっ?」 「・・・クロさんの好きは、多分、ずっと一緒にいたい、みたいな好きでしょ?私は、シロさんの性格は好きだけど、ずっと一緒にいたいとか思わないし」 「じゃあ、あかりんは誰とずっと一緒にいたいのっ?」 「・・・え」 (・・・ずっと、一緒にいたい人・・・?) 「ねえ、あかりんっ・・・」 「て!ゆうか!」 「ん?」 「私も、クロさんに聞きたいことあるんだけど・・・」 「ん!なにっ?」 「・・・どうしてクロさんは・・・学校にアオ達がいつも入ってこないこと、知ってるの?」 「・・・えっ・・・」 あかりの言葉に、それまで表情豊かだったクロが真顔になった。 「私、アオ達の話はアオさんにしてないし・・・シロさんから聞いたのかもしれないけど、、クロさんは、いつも見ていたかのように話してたし・・・」 「・・・・・・・・・・・」 「あと、」 「・・・シロさんが人間になるつもりないって、何で知ってたの?」 「・・・・・」 「確かに、シロさんは人間になるつもりがないって言ってたけど、研究所にいたときは人間になりたかったって言ってた。森を出てから考えが変わったって」 「でもその話は、あの時クロさんの前ではまだしてないはず。でも、クロさんは何故か知ってた」 「もしかして、クロさんは、前からシロさんを見つけて追ってたんじゃないの・・・?」 そう問いかけた直後、あかりの記憶は途絶えた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「・・・・ん・・・?」 あかりが目を覚ますと、そこは薄暗くてあたりがよく見えなかった。 「・・・ここは?」 「あ、目覚ましちゃったっ」 奥の方からクロの声が聞こえた。周りを見渡すと、そこは廃墟ビルの一室のようだった。手足をヒモで縛られていて、身動きが取れない。 「・・・・・!」 クロが電気をつけ、部屋が明るくなった。そこで、あかりは驚愕した。 部屋中には、シロの写真が壁一面に貼られていた。 おそらく盗撮写真だろうが、あかりやアオがシロと話している写真もあった。 「写真て凄いよねっ・・・いつもこうして、シロを見つめることができるっ・・」 (何これ・・ストーカー?) どうやらあかりの予想通り、クロは以前からシロをつけていたらしい。そして、昨日の様子だと、おそらくシロは気づいていなかった。 (でも・・・何で?) 「あかりんとは、折角友達になれそうだったのになっ・・・」 「ニャー」 「・・・・!?」 猫の声がした。その方向へ目を向けると、黒色の猫がケージの中に捕らわれていた。猫の首には、シロのお手製の首輪が巻かれている。 「黒色ちゃん!?何でここに?入院中じゃ・・・」 「さらってきたっ」 「はあ!?」 平然と答えるクロに、あかりは困惑した。 「あかりんさっ、おかしいと思わないっ?」 「何が・・・・?」 「研究所にいたとき、クロがシロと一番仲良かったはずっ。なのにっ、人間の世界に行ってから、こいつが一番大事とか言い出してっ」 「・・・・・」 「しかも、黒色なんて名前つけてさっ。きっとクロがいなかったら・・・さみしくてこいつを代わりにしてたんだっ、だからきっとっ・・・」 「・・・・・・」 クロは涙を滲ませながら、話を続けた。 「前に言ったように、クロ人間になる気はないっ。でもさあ、あかりんがこいつを助ける手助けなんかするからっ・・・」 「じゃあ何で、すぐにシロさんの元へ行かなかったの?」 「・・・・えっ・・・」 「ずっと、シロさんをつけてたんでしょ?自分が一番だって自信があるなら、すぐに会いに行けばよかったのに」 「・・・・・・・・」 「クロさん、実はわかってたでしょ?自分は黒色ちゃんにはかなわ「うるさいつ!!」 クロはあかりに黒い鞭を打ち付けた。 「・・・熱っ!?」 (そうだ・・・黒の色人の能力・・・) あかりはアオの言葉を思い出した。 『俺がスピード、シロが具現化、ミドリが硬質、チャイロが粘度というように、色人にはそれぞれ特徴がある。そして、クロは・・・・物体の温度を上げることができる』 クロはそのまま黒色の方へ向かった。 「やめてーーーー!」 あかりは精一杯もがくが、手足を縛られていてはどうしようもない。 (アオ・・・早く・・・) そう願いながら、あかりは自分の首元を見た。すると、いつも首につけている飾りが、なかった。 (え・・・!ない・・・!今日の朝は確かにつけてたのに・・!落とした?壊された?) あかりは一気に青ざめた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加