シロとクロ

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シロとクロ

クロが黒色に手を懸ける前に、何かがクロの前に投げつけられた。 「・・・・!?」 クロが扉の方へ目を向けると、アオとキイロ、そしてシロが立っていた。 クロへ投げつけられた塗料は白色だった。シロがクロを攻撃したのだ。 「シロ・・・何でっ?」 「クロ・・・黒色と、あかりさんを離してくれ」 アオ達はあかりの元へ駆けつけた。 「どうしてここがっ・・?あかりんのじーぴーえすは外したのにっ」 「あかりさんじゃない。黒色だ」 「へっ・・・?」 「黒色の首輪にGPSをつけてた」 「ど、どうしてっ・・・?」 「黒色は元々野良猫だし・・・どこか行方不明になったときにすぐ探せるように、僕がアオ達にお願いして作ってもらってたんだ.。・・・こんな事で役に立つとは思わなかったけど」 「・・・・・・・」 「それで、黒色が病院から移動してることに気づいて、ここに向かおうとしたとこでアオ達が僕の所に来て」 「俺たちはクロを探してた。でも居場所がわからないから、シロの所にいるかと思って行ったら・・」 「どうしてクロをっ?」 「あの、車の爆発の件だ。テレビでは車底部に異常な熱が加えられて爆発したと言っていた。車底部は〝黒色〟だ。そして、クロの特性と照らし合わせると・・・」 「あの爆発も・・クロさんが!?」 「ずっとシロを黙ってつけてたが、おそらくシロとコイツが絡んでるとこ見て嫉妬したんだろ。感情がおさえきれなくなったお前は二人の横にあった車を爆発させた。しかし、そのせいでシロが負傷してしまった。シロを救う為に、偶然を装って二人の前に姿を現した」 「・・・・チッ」 「あかりちゃん大丈夫~?ああっ!火傷してる~!」 「うん・・・でも軽い火傷だから大丈夫・・・」 キイロはあかりの元へ駆け寄り、手首の拘束を解いた。 「クロ・・・何てひどいことを・・・君はそんなことするよるような人じゃなかったのに」 「だって・・・!」 「だって?」 「シロがいつまで経ってもクロのこと、特別にしてくれないからっ」 そう叫んで、クロは足元の袋から大量の髪を取り出し、針のように硬質化させた。 「やばい、よけろ!」 クロの持つ髪達は変幻自在に部屋の中で動きまわり、アオ、キイロ、シロは避けることで精一杯だった。 花びらで髪を切ろうとするアオだったが、 「熱っ」 燃えるように熱いクロの髪に触れると、花びらは焦げてしまった。 そして、スピードの遅いキイロはクロの髪に捕らわれた。 「キイロ!」 「う、うえ~~熱い~髪気持ち悪い~」 捕らわれて苦しそうにしているキイロだったが、キイロに巻きついた髪は白髪に変色していった。しかし、硬質化がなくなっても、髪はキイロに巻きついたままで、キイロは身動きが取れなくなってしまった。 「シロ!」 アオはシロにアイコンタクトを送り、シロはキイロの元へ向かった。 「させるかっ!」 アオ達の意図を読み取ったクロが、また別の髪をキイロ達の元へ向けたが、寸でのところで、アオの塗料に切り落とされた。 「くっ・・・アオめっ」 「塗料だと焦げないからな」 そして、キイロに巻きついた白髪を取ったシロは、その髪でクロを攻撃するはずだったが。 「・・・・・・・・・?」 髪を手に取ったシロは、何もしなかった。 「シロ・・・?」 「クロ、僕は君を傷つけることはできない」 「っ・・・・」 そう言って、クロに接近しようとすると、、クロは足元にいた黒色にナイフをつきつけた。 「クロっ!」 「近づいたらコイツを殺すっ!そしてクロも死ぬっ」 クロは窓際に寄り、足をかけた。 「クロ、早まるな!」 「シロ・・・殺してっ」 「え?」 「こんな現実、受け入れたくないっ。シロに嫌われるなら死ぬしかないっ。どうせ死ぬなら・・・シロに殺されたいっ・・・」 「何言ってるんだ、クロ」 「じゃなきゃ黒色を殺」 す、と言い終える前に、クロの視界は反転した。 「・・・・・・・」 次の瞬間、目に入ったのはアオの腕だった。そして、その腕の向こう側にはシロが立っていた。二人の間には白い塗料と、花びらが飛び散っていた。 数秒して、自分はシロに本気で狙われ、とっさにアオが庇ったのだと理解した。 黒色は解放され、あかりが抱き上げていた。 シロはクロを本気で殺そうとしたのだ。 「・・・・・・お前もシロもとりあえず落ち着け」 「・・・ぐすっ」 また泣き出したクロに、シロはゆっくり近づき、頭を撫でた。 「・・・クロ。僕は、君のことが何より大切だよ」 「・・・・・・・・・・・・え?」 (((・・・今、フツーに殺そうとしたけど・・))) 周りの心のツッコミはスルーして、シロは話を続けた。 「だけど、僕が命を懸けて守りたい存在は君じゃない。黒色なんだ。・・・ごめん・・」 「何でっ?クロはシロの為だったら喜んで死ねるっ!こんな奴・・何もシロにしてくれないのにっ・・・!」 「クロ。そうじゃない」 「?」 「何かを与えてくれるから大切なんじゃない。仮に黒色が僕を必要としていなかったとしても・・僕は黒色と一緒にいたいし、全力で守りたい。そう思える相手は黒色しかいないんだ」 「でも、クロのことが大切なことにはほんとに変わりはないから。君が命を懸けられる相手じゃなくて、君の為に命を懸けられる人と一緒になってほしい」 「申し訳ないけど、今の僕は・・・君の為に死ぬことは出来ない」 泣きじゃくるクロを、シロは優しく抱きしめた。 「ほんとに大好きで、大切なのは本当だよ・・・クロ」 「あの、シロさん・・・。横からで悪いけど、あんまりそうゆう事は言わない方が」 「え、何でですか?」 「いや、あの、クロさんは余計期待しちゃうだろうから・・・」 「?でも、僕がクロを好きな気持ちに偽りはないですよ?ただ、一番じゃないだけで」 「だから、その・・えっと・・・」 「ま、まあとりあえず解決だね~あかりちゃん、時間大丈夫?」 「あ、そうだ、学校戻らないと!」 「クロ、あかりさんに謝って」 「あかりんっ・・・ごめんなさいっ」 「あ・・・うん。もう解決できたし、大丈夫」 クロとシロと別れ、あかりは一旦学校に戻ることにした。その道中、アオがあかりのスマホを手渡してきた。 「アンタのGPSたどったら、学校の裏庭に落ちてた」 あかりを気絶させた後、クロがその場に捨て去ったのだろう。あかりがスマホを覗き込むと、知らない番号からの着信が入っていた。 「・・・誰だろう?学校の先生かな?」 訝しながらも、折り返すことにした。 「・・・・もしもし」 『・・・・藤吉、あかりさんですか?』 「・・・・はい。えっと・・・どなたですか?」 『僕は・・・君の、叔父・・・藤吉秋彦の・・・息子です』
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