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救出作戦
「・・・で、どうする?」
シロがいる研究施設の近くまで着いた四人だが、入り方がわからず、茂みの中から覗き込んでいた。
施設からは相変わらず白色の発行体が出ていたが、入口は閉ざされ、銃を持った警備員が立っていた。
「・・・とりあえず警備を突破しないといけまセンガ」
「でもどこで見張ってるのかわかんないよ~。監視カメラ?とかもあるかもしれないし~」
「そもそも中の経路もわかりマセンシ」
「だよね~」
「・・・・・・・・・・」
ミドリが言っていたように、何の情報も準備もない。何の策もない四人は途方に暮れた。
「ああっ!もうっ!こうしてる間にもシロが危険なんだよっ!」
「・・・・そうだね~。とりあえず、早く入ろう~。チャイロ~」
「・・・オ、オレ・・・?」
「とりあえず、警備の人達を全員土に埋めちゃおう~」
「・・・キ、キイキイ・・ケッコウ・・・ダイタン」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・・・?」
「お前・・・何だ?」
入口に近づいてきた一人の女性。警備員が不審に思い、近づくと。
「・・・・・・・・!」
次の瞬間、地面が大きく揺れ、警備員達は土の中に埋もれていった。
「お、おい、何だこれ!?」
「う。動けない・・・!」
「チャイロ~、首までだよ~。顔埋めると死んじゃうから~」
「ワ・・・ワカッテル・・・オレ、ヒト、コロサナイ・・」
「な、何だ、お前ら!?」
動けなくなった警備員達を横目に、四人は入口まで突き進み、固く閉ざされた防御扉の前で、ミドリがツルを変形させ、最大限に硬度を上げた。
「ハッ!」
ミドリが切りかかると、頑丈な防御扉はバラバラに崩れ落ちた。
「す、すご~い!さすがミドリ~」
「お世辞はいいから、急ぎマスヨ!」
「ミ・・・ミドリン・・・ソッケナイ・・」
建物内へ侵入した四人だが、入口のエントランスには誰もいなかった。
「あれ~?誰もいないね~?」
「シ、シロはどこにいるんだろっ?」
「え~、クロ~匂いとかでわかんないの~?」
「わかんないよっ!クロ動物じゃないもんっ」
「ス、ストーカーノクセニ・・・・」
「みんな酷いっ!」
すると、上の方から大きな音がした。
「今の音・・・上から・・・」
「階段がありマス。上がりまショウ!」
四人は階段を上がり、二階の広場らしきスペースへ到着した。
そこには、驚愕の光景が広がっていた。
「な・・・なにあれ~?」
混乱した研究員達が、奥の〝あるもの〟に向かって、拳銃を発砲していた。
その〝あるもの〟とは。
「シロ・・・・・」
白い塗料にまみれた〝シロ〟だった。
どうやら意識はなく、白の色人の能力が暴走してるらしい。白色の大きな触手が暴れまわり、研究員達を突き飛ばしていた。
発砲されても、白の塗料の中に取り込まれているだけで、無意味なようだった。
そして、割れたガラスや、白い塗料があちらこちらに飛散していた。
その光景に立ちすくんでいると、一人の研究員に気づかれてしまった。
「お、お前ら・・・・!」
「やばい~見つかった~」
「今はそんな場合じゃないデショウ。シロを止めなければ」
「デ・・・デモ・・・ドウヤッテ・・・」
「とりあえず捕らえレバ・・・」
そう言ってミドリは持ち運んだツルを硬質化し、シロに向かって伸ばした。しかし、すぐに白の塗料によって跳ね返された。意識はないが、動くものを無意識にはじくようになっているらしい。
「くっ・・・・」
「シロ、僕たちって気づいてないのかな~?シローーー!」
「・・・・・・・」
キイロはシロに向かって大声で呼びかけるも、反応はなかった。
「き、聞こえてないみたい~」
「あんな全身塗料にまみれてたら聞こえないデショウ。何でこんな事二・・」
「ど・・・どうればっ」
色人達が戸惑っていると、意識のないシロは、震えながら、口を開いた。
「・・・黒、色・・・殺、し・・・もう、いない・・・黒」
「何か言ってる~・・・」
「多分・・・黒色のことっ・・・。でも、意識はないみたいっ・・」
「と、とりあえず、シロの目を覚まさせなきゃ~・・・・クロっ」
「はいっ」
「僕たちが、ちょこまか動いてシロの気をひきつけるから、クロがスキをついてシロに近づいて、目を覚まさせて~!」
「え、ええっ?クロが?」
「クロが一番上手くいく可能性が高いと思う~。シロと一番仲良かったし~多分、クロの声なら聞こえるんじゃないかな~」
「・・・で、でも、クロっ、もうフラれてるしっ・・・」
キイロに任命されたクロだが、本人は弱気だった。
「・・・シロを助けたくないの~?」
「た、助けたいけどっ」
「じゃあやってよ~!」
「でもっ・・・・」
「フラれたとしても、シロを救う権利を奪われたわけじゃないじゃない~。クロが守りたいものを守る権利は、誰にも奪うことはできない!!」
「・・・・キイロ」
「お願い、クロ・・・・僕たちが命がけで守るから~!」
「・・・・・・・」
クロは意を決したようにうなづき、キイロは周りの研究員達を見た。
「研究員のみなさーーーん!僕たちがシロをとめまーーす!銃は辞めて、避難してくださーーい」
キイロは大声で研究員達に訴えた。
「あ、あいつら・・・」
「ど、どうする・・・・?」
「いや、でもい今はとりあえず、逃げるしか・・」
いきなり色人達が現れたことでかなり戸惑っていた様子だったが、とりあえず命には変えられないと判断したようで、キイロの指示に従い、発砲は辞めた。
「いっせーのでで、行くよ!」
キイロ、ミドリ、チャイロは同時に攻撃を開始した。シロの無意識の攻撃を素早くかわしながら、クロはシロに近づいた。
「シロー・・・・!」
クロはシロに抱きつき、呼びかけた。
「シロっ、シロっ・・・・!」
「・・・・・・」
しかし、シロは呼びかけには答えず、呆然としていた。クロは構わず、シロの顔にこびりついている塗料を払った。
「シロ、シロ!」
「・・・・あ、ああ・・・」
「シロ、聞いて!」
「・・・・・・・・・」
「・・・・黒色、生きてるっ!」
「・・・・・・え?」
クロはパンツのポケットから写真を取り出し、シロに見せた。
「シロが連れ去られた後に家に入ったら黒色倒れててっ・・・すぐ病院連れてったっ」
「・・・・・・・・・・」
「死にかけだったけど、なんとか助かってっ・・・今、入院してるっ」
「・・・・クロ、イロ・・・クロ、」
「シロのことずっと待ってるっ・・・迎えに行ってあげてっ・・・」
「・・・クロ・・・」
シロを囲んでいた塗料は流れ落ち、シロは涙を流し、クロを抱きしめた。
「良かった~!クロ、シロ!」
シロの攻撃がなくなり、キイロは喜んでシロとクロに駆け寄った。
「・・・で、ここからどうしマスカ」
キイロ達が見渡すと、拳銃を構えた研究員達に取り囲まれていた。
そして、その中の一人の男性が近づいてきた。
「・・・・驚いたよ、君たちがまだ生きてたなんて。しかも、そんな姿で」
「あなたは」
「君たちの世話を担当していた安藤だよ。まあ覚えてないと思うが」
安藤と名乗ったその男は、五十代ほどの見た目で、たたずまいからしておそらく幹部の社員なのだとわかった。
「私たちはシロを迎えにきただけデス。もう用はないので帰りマス」
「・・・・そうはいかない。そこのシロくんがこれだけ研究所を破壊したんだ。タダで帰す訳にはいかない」
「そ、そもそもあなた達が強引に誘拐したからこんなことになったんですよ~!」
「・・・そうデス。ここで起こったこと、世間に公表してもいいんデスヨ」
「・・・・公表?したければすればいい」
「?」
「ここから無事に帰れるならね!」
次の瞬間、大きな爆発音が研究所に響き渡った。
「な・・・何この音~?」
「シロくんのせいで、彼らが目を覚ましてしまった」
「彼ら?」
「・・・まさか、被験者が自分たちだけだと思ってたんですか?」
「ほ、他にもいたノカ?」
「そうだよ。しかもとっておきの能力を持ってる」
「能力~?どんな~?」
「それは、見ればわかる」
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