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私の青色
「行方不明!?」
「そ、そう。ウイルスに対して強力な抗体をもつあかりちゃんの心臓を移植したから、アオくんもそのまま人間になるはず・・・だったんだけど。手術後に、行方不明になっちゃって・・」
上野が病室のテレビをつけると、ニュース映像が流れた。
『こちらは現場から中継です。昨夜、こちらの山奥で白、の発光体が確認されており、その後に大きな爆発音が聞こえたということです』
『そして、上空からの映像ですが、何かの建物が、爆破されて、残骸となって残っています。しかし、遺体は見つかっていません』
「こ、これは・・・?」
「澤上の新しい研究施設。昨夜に爆破したらしい」
「そ、それはアオたちが・・・?」
「わからない。でも、色人は全員行方不明だ」
「行方不明!?」
「全員のアジトを探したけど、空だった」
「・・・・・・・・・」
あかりはショックでうなだれた。
(・・・・もう、会えない・・・?)
「あかりちゃん、こんな時になんだけど、しばらく、身を隠した方がいい」
「・・・・え・・・?」
「昨日の爆破で、澤上の研究施設は潰れたけど、あれはおそらく一つに過ぎない。幹部達は生きてるし、おそらくまた君を狙ってくる」
「そんな・・・・」
「確かに君は人間に戻った。しかし、重要参考人なことには変わりはない。他の色人たちの行方がつかめないなら、なおさら君が標的になりやすい」
「もうアオくんたちもいないし、君を守ってくれる人はいないんだ。僕は仕事があるからここを離れられないけど、君は、どこか遠く・・・出来れば海外にでも・・・」
「・・・・・・・・」
「まあ、すぐ決断はできないと思うけど。とりあえず・・」
「判りました。学校辞めて、移住します」
「ああ・・・・て、はい?」
あかりの早すぎる決断に、上野は耳を疑った。
「はい。元々、お母さんを養うために勉強してただけで、勉強自体はあまり好きじゃなかったし。それに、実は、小さい頃からの、夢があって」
「夢?」
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数年後。日本から離れた、異国の地。
「いらっしゃいませー!」
男性二人が店のドアを開けると、中から一人の女性が元気よく挨拶をした。
「二名様ですね?どうぞ!!」
「お姉ちゃん、元気がいいな。名前は?」
「ありがとうございます。私はあかりっていいます!日本から来ました!」
「ほお、日本から。でも何でわざわざ蕎麦屋なんてやってるんだい?」
「小さい頃からの夢だったの。でも、母が病弱で、飲食店はなかなか稼げないから、母を養うために、諦めてたの」
「うう~泣かせるねえ。入口に貼ってある絵は、お母さんかい?」
泣くようなしぐさを見せた後、男性は入口に貼ってある青い絵を指さした。
「・・・海のつもりで描いたんだけど。・・・あと、ずっと待ってる人がいるの」
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「・・・でもさあ、アオの抗体で人間に戻れたはいいけど、何でアオの目は青いままなんだろ~?」
「さあ。でもおかげで・・・・見つけることが出来た」
青年はそう応え、市場の角にある蕎麦屋のドアを開けた。
「いらっしゃ・・・・・」
店のドアが開き、いつものように元気ように元気よく挨拶しようとしたあかりは、その人物を見て止まってしまった。
「あなたは・・・・・」
「・・・ある、旅人の絵描きに言われたんだ。君の目の色によく似た美しい青色を、前に旅した国の蕎麦屋で見たことあるって」
〝入口に貼られてる自作の絵を見て、ユニークな形の自転車だねって褒めたら、海の絵だって店員さんに怒られた〟
〝まあ、絵の造形はともかく、色遣いはとても美しかった〟
〝そのことを褒めたら、世界に一つしかない色だって〟
〝自分の心に焼きついて離れない、だから、自分で調合して作った青色だって〟
「あかりちゃん、お蕎麦五色ありますか~?」
そう言って、アオ、キイロ、ミドリ、クロ、黒色を抱えたシロは、あかりの店に足を踏み入れた。
久しぶりに再会した色人たちは、みんな元の人間の色に戻っていた。
そして、アオとキイロはすっかり成長して大人の青年になっていた。
涙を流したあかりは、自分より背の高くなったアオに飛びついた。
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あの爆破の前の出来事。
「絵を描く?」
「そ、そう、つまり、建物の壁一面に黄色の塗料を塗って、爆発の直前に僕の能力で軟化させれば、クッションになって~「バカ」
「え、ええ~!酷い~!これすれば全員助かるし~、名案でしょ~!」
「そんな時間ないデショ!大体壁一面て、どうやって・・・・マサカ・・・」
何かを察したミドリに、キイロはにやりと笑った。
「・・・・そう。あの被験者達の髪を、筆代わりにするの~。絵を描くみたいにね~」
「彼らの毛に黄色の塗料をぶっかけて、僕らが囮になって暴れまわって、壁一面に塗料を塗るの~。爆弾も、アオが埋めてくれてるなら、威力が落ちてるはずだし」
そして、四人の色人は再び施設の中に戻り、黄色の塗料をかぶせた被験者達を解放し、暴れまわった。
「・・・アオ~!」
解除室に入ってきたキイロに、アオは目を丸くした。
「キイロ!?何で・・・?」
「いいから、来て~!!」
そのまま強引にアオの手を引っ張り、キイロは施設の壁を最大限軟化させた。
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そして、爆破後。
「・・・いてて・・」
「生きてる~?みんな~」
瓦礫に埋もれた色人達は、傷だらけになりながらも、立ち上がった。
「ったく・・・無茶しやがって」
「ア、アオ~!生きてた~」
キイロは泣いてアオに抱き着いた。
「ア、アオ、髪が!髪が!」
「?」
近くの水たまりに映る自分の姿を確認すると、髪色が、黒くなっていた。
「ア、アオ人間に戻ったんじゃない!?」
「で、でも、アイツもウイルスに感染して・・・」
戸惑うアオ達の元へ、険しい表情の安藤が現れた。彼は何も言わずに、色人達を見つめていた。
「・・・・・・・・・・」
「助けてやったんだから、今回は見逃せよ」
「そ、そうだそうだ~」
「何なら、ここで復讐してもいいんデスヨ?私たちは、まだ色人デス」
そう言って、ミドリはツルを持った。
しかし、安藤は予想外の言葉を発した。
「・・・・逃げろ」
「え?」
「この爆発騒ぎで、澤上の幹部達がここへ向かってくる。その前に、逃げろ。出来るだけ、遠くに」
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