末永くご愛顧のほど、宜しくお願い致します

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末永くご愛顧のほど、宜しくお願い致します

「ん! っぁ! ヴィスタ、もうダメだって……!」  だだっ広い空間に淫靡な水音が響く。後孔だけでなく、鼓膜まで犯されているような感覚。  ローションスライムでとろとろにされたニーシャのソコは、ヴィスタを根本までずっぷりと受け入れていた。 「ん、ごめ、オレももう限、界っ!」 「ひっ……!」  初めは違和感しかなかった。けれど解され突き上げられるうちに、思いもしない甘く痺れた感覚がニーシャを支配してしまっていた。  もう無理だとニーシャが再び限界を迎えると同時に、ナカでヴィスタの棹も大きく震える。  勢い良く吐き出される白濁の生々しい感覚に追い打ちをかけられて、ニーシャはヴィスタの上でガクガクと身体を震わせた。 「は……はっ……」  首筋にそっと口付けられる。  先ほどまでの激しい行為とは反対に労うような優しいキスはやたらに甘くて仕方がない。心臓が変な感じにきゅっと締まって、ニーシャはそんな自分が分からなくなる。 「ニーシャ、よく頑張ったな」  まだ余韻でぼーっとしているところに、向かいから腕が伸びて来た。ディークラディアはニーシャの脇に腕を入れると、ぐっとその身体を持ち上げる。 「あ、あっ……!」  ずるり、埋まっていたヴィスタのモノが腸壁をなぞって抜けて行く感覚に、ニーシャはまた震える。 「慣れていないだろうからゆっくり休ませてやりたいところだが……」  ディークラディアは言いながら、幼子をだっこするような形で先ほど召喚した椅子に腰を下ろした。  鼻先に迫る、美しい魔王様の顔。  エメラルドの瞳は色欲にたっぷり濡れており、迂闊に覗き込んでしまったニーシャはそのまま飲み込まれそうな錯覚まで覚える。 「呪いが安定していないな。すぐに反転作用が起きている」 「はへ……?」 「今度は光属性の魔力が生成過多状態だ」  達した直後は、その激しい運動量に息が乱れていた。けれど同時に魔力の過剰生成による酩酊感が軽減されたのも事実。なのにディークラディアの言う通り、落ち着いたと思った症状はまたぶり返して来る。 「ニーシャ、上書きしてやる」 「え、あ、まって、さっきイッたとこ……!」  抱すくめられ、腰を持ち上げられる。  疼きがまだ溜まったままの後孔にちゅぷりと先端が突き付けられる感覚。 「っ!」 「ニーシャ、怖くない」 「や、そんなこと言われても」 「俺の形を覚えてくれ。先ほどのことが全部吹き飛ぶくらいの快楽をやろうな?」 「はっ、言ってろ」 「あ、あ、あぁ――――っ!?」  ディークラディアの屹立が、ニーシャのナカに沈み始めた。腰をがっちり掴まれているので、どこにも快感を逃しようがない。  仰け反り晒した喉元に食らいつかれ、甘噛みされる。食い破らない絶妙な加減で人間にはない牙を立てられ、恐怖と官能がごちゃ混ぜになった感覚にニーシャは飲み込まれる。 「ディー、ディー、ひっ、牙ぁ」 「うん?」  怖い、と口にする余裕はなかった。が、読み取った魔王は浅く立てていた牙を放し、代わりにねっとりと小さな跡を舐め上げた。 「んんぅ!」  甘噛みも舐られるのも、クセになったら引き返せないやつだとニーシャは内心怯える。人間の理性を揺らす、非常に際どい感覚だった。  その間にもずぶずぶとディークラディアのモノはニーシャの深いところへと嵌り込んでいく。 「あ、あ、ディー、そんな深いのむりぃ」  ヴィスタの時とはまた違う形に拓かれる。 「柔らかくて熱いなぁ? 必死にうねって吸い付いて来ているのが分かるか?」 「言わないで……っ」 「恥じらうニーシャも可愛いぞ。ほら、好きなだけしゃぶるといい」 「うう~! んぁっ!」  埋め込まれたモノの様子が生々しく伝わるのが堪らなかった。元々大きいのに、ニーシャの中でまた膨れ上がってドクドクと余裕なく脈打つ。 「ひ、ぁ!?」 「あぁ。ココがニーシャの悦いところか」  不意に突かれた場所から一際強い刺激が走る。  これはダメなやつだと懸命にニーシャは身を引いたが魔王が逃してくれるはずもなく、そもそも体面座位でニーシャの足は地面についていない状況。追い込まれる一択しかない。 「ひっ、あ、あぁっ」  下から突き上げられる感覚をどうにか逃したい。堪らずニーシャがディークラディアの首筋に腕を回してしがみ付けば、魔王様は大層機嫌が良さげに喉を鳴らした。 「うっ、でぃー、んぁ、あ、もう……!」  怖い。  いつの間にか気持ち悦くなってしまっている。  こんなことをするつもりはなかった、性愛的に好きな訳じゃないと散々言っていた割りに、自分の身体がチョロすぎてニーシャは泣きたくなる。頭はどんどん快楽に塗り潰されて行って、気持ち悦いけど同時に怖かった。  この快楽の坩堝に身を投げ出してしまったら、もう取り返しがつかないような。 「ヴィスタ、ヴィスタ」  誰かにしっかり繋ぎ止めていてほしくて、気が付いたら腕を伸ばしていた。空を彷徨う手はほどなく一回り大きい手に捕まえられる。 「ニーシャ?」  途端に安心してしまう。 「ん? どうした?」  絡められた指を自分からぎゅっと握り込んでしまう。 「とろけて可愛い顔してんなぁ」  見ててやるよ、沢山イきな? とヴィスタの視線がニーシャに注がれた。もう、目が逸らせない。 「ニーシャ、余所見か? ココの、」 「んっ!」 「ニーシャのとびきり悦いところを突き上げて、ぐちゃぐちゃにしてるのは俺だが? ニーシャも美味そうに咥えてくれているじゃないか」 「ひぁ、ディー、ヴィスタっ」  下から容赦なく突き上げられる感覚、絡んだ指と指、腰を掴む力強い手のひら、一途に痴態へと注がれる視線。  全て全てがニーシャを絡め取り、快楽にずぶずぶに漬け込んでいく。 「ニーシャ、可愛い俺の嫁」 「訂正しろ、お前のではない」 「うるさいのがいるが、まぁ気にするな。な、ほら、たっぷり注いでやるから存分にイくといい」 「んんーーーーっ!?」  やがてみっちりとニーシャのナカに埋め込まれたモノがぶるりと大きく震える。まるで吐精を促すように更にニーシャは無意識に締め上げてしまっていた。 「ぐっ」 「は、はっ、ぁあ」  そしてニーシャもまた絶頂を迎え、吐き出したものでディークラディアの腹部を汚す。  もう出ない、と声にならない声で呟いて、その胸元にニーシャは雪崩れ込んだ。 ◆◆◆ 「ん……ん~」  皮膚の上を何かが滑る感覚。  重い瞼を何とか持ち上げると、初っ端からとんでもない光景が飛び込んできた。 「ひょえ! な、何して……!」 「うん? ニーシャ、目が覚めたのか」  ヴィスタが膝をつき、ニーシャの内腿を布で拭っている。内腿ということはニーシャは大きく開脚をさせられている状態であり、その間にヴィスタは屈んでいる状態だ。 「綺麗にしてるだけだよ」  もちろん、ニーシャの下半身は一糸纏わぬ状況である。 「や、や、やめて、むり、自分でする、恥ずか死ぬぅ!」 「恥ずかしがって涙目のニーシャはヤバいくらい可愛い」  人でなしだ。これで勇者だなんて詐欺だ。  何とかやめさせようとジタバタすると、それを背後から抑え込まれる。 「ニーシャ、じっとしないと着せられない」 「ひっ、ディー!」  現状を改めて把握する。  勢いのまま二人に代わる代わる抱かれて、その後少し気を失っていたらしい。  依然、ニーシャはディークラディアの膝の上にいる状態らしく、魔王様はニーシャにシャツを着せているところらしかった。ボタンを一つ一つ丁寧に留めてもらっている最中らしい。  二人の極上の男に傅かれ、身繕いをされている状況。 「自分でするってば!」  今更ながらにとんでもないことになってしまったと焦る。最中の記憶が蘇って来て、とても正気ではいられない。  ニーシャは真っ赤になっているだろう顔を覆いながら、一線を超えてしまった事実にのたうち回った。 「ニーシャ、暴れるな」 「そうだぞ、それにニーシャ、疲れただろう」 「そうだ、これ以上無理はさせたくない。それともーーーー」 「んっ!」  ボタンを留めていたはずのディークラディアの指先が、布越しにニーシャの乳首を掠める。 「まだ足りないか? 続きをと言われれば、いくらでも応えられるが」 「確かに」 「ひゃあ!」  ヴィスタの方は散々出して萎えているニーシャのソレをきゅっと握って来た。  この期に及んで色欲に満ちた二人の顔。  ヤることをヤってしまった後ではあったが、ニーシャは堪らず叫んだ。 「言ったじゃん! ヴィスタもディーも呪いのせいでオレに執着してるだけだって! それなのにこんなことになっちゃって本当にいいの!? これってめちゃくちゃ不健全じゃない!?」  勇者と魔王は顔を見合わせ、それから“まだ言うか”という表情を作る。 「その説推すなぁ」 「っというか、それの何が駄目なんだ?」 「ぁっん!」  喉元を擽られ、内腿に唇を寄せられる。誘惑の手が再びニーシャに伸びる。 「呪いのせいでもいいし」 「不健全なのが悪いことだとは全く思わない」 「そりゃ思ってた形とは違うけど」 「ニーシャの命も掛かっていることだし、ニーシャだって俺がいれば安心だろう? 気持ち悦い思いも沢山できる。存分に甘やかされてくれ」  啄むようなキスがあっちからもこっちからも降り注いできて、ニーシャは心臓にむずむずと妙な痒みを覚えた。  確かに、快楽を感じてしまったのは事実だ。  二人が殺し合いをしないと言い出したのにもホッとした。  そもそも二人のことだって、嫌いな訳じゃない。  きっとこのまま流されてしまえば全部が上手く収まる。  それなのに、どうしてこんなに据わりが悪いのだろう、何かに納得できないままなのだろうと、自分の心の見えなさにニーシャは戸惑っていた。  絆されてしまえばいい。楽になれる。  疑っているように呪いの力が二人の心に影響していたとしても、生まれ持ったものの強制力は嫌というほど身に染みていて、どうにもできないと分かっているのだから諦める、受け入れるのがきっと正しい。 「あー、分かった」  けれどふとヴィスタがニーシャの脚の間から顔を上げ、何やらにっこりと微笑んで来た。 「ニーシャは純粋に好きになってもらいたいんだ」 「なっ」 「オレ達の気持ちがまやかしかもしれないのが怖いんだな?」 「そそ、そういうことじゃ……!」  混じりけのない気持ちが。  嘘偽りのない真実の愛情が。  傷付かずにいられる保証が。  本当はほしい。ほしい、ほしい、ほしい。そんなの欲しいに決まってる。  でもそんなもの、手に入れられるはずがない。今までずっとそうだった。 「可愛いな、ニーシャ」 「だからちがっ」 「認めるのは怖いな、知ってるよ、ニーシャがそのスキルのせいでどれだけ嫌な思いを、悲しい思いをしてきたか。沢山の経験のせいでニーシャは基本的に怖がりで疑い深くて、そんでもってどこまでも寂しがりやだもんな」 「ヴィスタ!」  指摘されて、初めて気付く。ヴィスタの言うことは全部図星だと。  だって、でも、否定しておいた方が楽ではないか。安全ではないか。  毎度毎度傷付いては、そのうちに心が死んでしまう。 「だが、ニーシャ。本当に欲しいものに対しては、時に傷付く覚悟で飛び込まなければならないものだ。そして生き物には図太さも必要」  傷付く覚悟。  ディークラディアの言うことも分かる。  何も失わずに生きることはできないし、覚悟のない人生に転機は訪れないとも思う。 「なぁ、ニーシャ、呪いが本物だったとして、だがそれは幸運なことだと思わないか?」 「はい?」  が、続いて耳慣れない言葉が飛び込んで来て、ニーシャは思わず大きく首を傾げた。  幸運。  この世でもっとも馴染みのない言葉だ。せいぜい、不幸中の幸いというやつとしか付き合いがない。 「延縛の呪いは、絶対に裏切りを許さない。俺は、いや、ここに少なくとも二人はニーシャを絶対に裏切らない男がいるということだ。ニーシャは独りぼっちなどではない」 「――――」  都合の良い解釈だ、と思った。  でも、物は考えようだとも言えるのかもしれない。 「誰も巻き込まない人生なんて、そもそも存在していない」  ディークラディアが言う。 「誰も巻き込まない人生なんて、ない……」  その言葉が、刺さる。  誰もが誰かを巻き込みながら生きている。ニーシャだけがそうなのではない。  そしてもしニーシャに属性やスキル、呪いの件がなかったとしても、生きている限り誰かを巻き込み、そして誰かに巻き込まれながら生きて行くものなのだ。  それは特別なことでも何でもなく。当たり前の、普通のこと。 「分かるか、ニーシャ。こっちにはな、人生丸ごとニーシャにくれてやる覚悟があるって話だよ」  ヴィスタが続ける。  気前の良い、太っ腹な話だと思った。  ニーシャに全部丸ごとだなんて、そんな。 「もらってほしいんだよ。ニーシャのも、欲しい。お互いに預け合うってこと」  じわり、鳩尾の辺りからじんわりと熱が上がってくる気配。  嬉しい、と心が勝手に反応する。 「ニーシャ、あのもふもふ毛玉が何か言ってただろ、素直にとか何とか」  言って、ニーシャ、とねだられる。  いつだって勇気がなかったのだと、この段になってニーシャは気付かされた。  ウルスが言いかけてやめた言葉に、どんな意図があったのかなんて知らない。分からない。  けれど、確かに自己防衛ばかりが生きる術になっていて、ニーシャはもう随分と前に踏み出すことをやめていた。ただ隅の方で小さく縮こまっていただけ。 「嫌いじゃないだろ?」 「……嫌いじゃ、ない。ヴィスタのことも、ディーのことも」 「本当は好きだな?」 「っ……!」  はっきりと口にしてしまうのは怖い。  言葉は音にして口に出してしまうともう取り返しがつかない。  そこに“在る”ことを認めてしまえば、傷付くかもしれないし、その可能性に怯えることになる。  でも、それでも。 「す、す」  言え、とニーシャは己を叱咤する。  多分ここが、人生で一番勇気を掻き集めるところ。自分の心から目を逸らしてはいけないところ。 「…………好き」 「「!」」  口にしてしまったら、ものすごい羞恥が駆け上がって来た。恥ずかしさで顔から火が噴き出そうだ。 「お、真っ赤になった」 「瞳が潤んでいるな」 「実況してくれなくて結構です……!」  ニーシャを翻弄することになると二人はやはり息ぴったりで、絶対に仲良しじゃんとニーシャは心の中だけで思った。  でも、仲良くできそうな要素があるならそれに越したことはない。ニーシャはどちらかだけを選ぶことはできないし、経緯はまぁ物申したい部分が沢山あるけれど、こうなった以上三人仲良くやっていくしかないのだから。 「あぁ、ヤバい、ニーシャの“好き”、マジで破壊力がある」 「正直かなりクるものがあるな」 「ひっ」  が、途端にまた臀部に昂ぶりを感じて、ニーシャは背後を振り仰いだ。 「ディー!」 「恋い慕う相手に好きだと言われて、反応しない男がいるものか」 「ひゃっ、ちょっと……!」  おかしい。  終わったはずなのに、身繕いされていたはずなのに、何故か両方の胸の頂きをきゅっと摘ままれて、ニーシャの腰が浮いた。 「ニーシャ、そっちの男ばかり構うのはやめてくれ」 「わわ、ヴィスタ! 何してぇ、んんう!」  しかもそれに対抗するように、ヴィスタがニーシャのモノを抵抗なくぱくりと咥えた。目に毒すぎる光景だ。  二人はまるで競うように次々とニーシャの身体に淫らな刺激を与えて行く。 「むりむり、だめ、そんな続けてされたら保たないって……! あうぅ!」 「ニーシャ、愛してる」 「俺達の思いの丈を、存分に受け止めてくれ」 「ひぁ、あ、やら、そこ今触っちゃあ……!」  早まったかもしれない。  うん、早まった。ちょっと迂闊な発言だったかも。  第一、二人相手に一人とか分が悪すぎる。そこら辺の取り決めをきちんとするべきだった。  早速ニーシャの中に後悔が過る。  そもそも体力面で叶う訳がないのだ。この調子で抱かれていては身体が持たないし、それ以前に快楽堕ちしてしまう。二人にすっかり依存してしまう。  でも。 「ヴィスタ、ディー、ぁ」  好き、という言葉が吐息の合間に溶けて行く。 「ニーシャ……!」 「っとに、可愛いなぁ、もう!」  それでも、二人にはしっかりと伝わっていて。  属性・生贄、スキル・不幸、オプション・呪い持ち。  快楽の波の合間でニーシャは思う。  二人の生贄になら、なってもいいかも。  呪いの力で縛り付けていいのなら、もう放してやれないし。  これまでの人生には、不幸なことが沢山あった。自分も不幸だったし、人のことを巻き込みもした。  でも、もしこういう言い方が許されるなら。  きっと、禍を転じて福と為すとはこういうことなのだろうと。
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