誠に残念なお知らせながら、クーリングオフは適用されないようです

1/1
前へ
/6ページ
次へ

誠に残念なお知らせながら、クーリングオフは適用されないようです

「うっ、うっ……」  大きな声を出したら眩暈がした。でも、ヴィスタに触れられるとそれが治まる。  ニーシャは半泣きになりながら、この世の無常さを恨む。 「ひどい、国家に売られた……」  今回のことは、つまりそういうことなのだろう。  事の中心にいるのはいつだってニーシャ。ヴィスタとディークラディア、相手がどちらか一方が決まるまでに甚大な被害が出ることは必至。人間側からすると、魔王に勝たれるのもマズい。そもそも、強すぎてどうこうできない。  それでも二人を上手く丸め込む方法を模索した結果、ニーシャを上手く使えばどうにかなると、そういう考えに至ったのだろう。  実際、不服な面はあるらしいが、ほぼほぼその目論見は成功している。  ニーシャだって、二人が殺し合いをしないのならそれは良いと思っている。  でも、だからってこんな風に身売りをさせられるとは思わなかった。ショックがないと言えば大嘘だし、そもそも抱かれるだなんて心の準備ができていなさすぎる。 「そうだな、アイツら酷いな。ニーシャに全てを背負わせて」  元凶が何やらもにゃもにゃ言っている。そもそも二人にもう少し大人げというか分別があればこんなことにはならなかったのでは、とニーシャは思った。 「やはり異様に魔力の生成スピードが速いな、まだ慣れてないからか? それとも術の方に不備があったんじゃないだろうな」 「んぁっ」  深く潜り込んで来た手が、ニーシャの胸の頂きに触れる。 「かわいー声だな?」 「嬉しくないぃ、っていうか、こんなことするつもりなかったのにぃ!」  けれどしなければ命に関わる。  ニーシャには拒否権がどこにもない。 「でもニーシャ、オレのこと嫌いじゃないだろう?」 「自惚れ!」 「じゃないと思ってるけど」  嫌いじゃないけど、そういう“好き”という感情もない。ない、はずだ。  ヴィスタは幼馴染で、そういう意味では大切で、人生のどこを切り取ってもニーシャの傍にいたし、これからもそうでないと違和感があるのは間違いない。けれど、乳繰り合う予定はどこにもなかったのに。  どう反応すれば良いのか分からなくて助けを求めるように視線を彷徨わせたら、向かいのディークラディアと目が合った。  いつの間にかテーブルセットを呼び出し長い脚を優雅に組みながら、こちらを見物していらっしゃった。 「ディー! 何見てんの! 悪趣味!」 「順番を譲っているんだ、特等席からの見物くらい許してくれ。触れている相手は最低最悪極まりないが、正直ニーシャのとろけた顔と痴態は最高の鑑賞物だ」 「とろけた顔なんてしてませんし、まだ痴態も晒してないつもりですけど!?」  しかもこの状況、観客付きというのが最悪だった。 「いくら生贄属性だからって、国家規模でハメられるなんて、というか、ウルスさん、信じてたのに……」  ショックなことは色々あるが、そこが一番堪えている気もした。 「うっ、うっ、もう誰も信じられない……」  ビジネス上の付き合いであることは百も承知しているが、それでもヴィスタとディークラディアに次いで長い付き合いのある相手だった。それなりに心を許していた。信頼関係があると思っていたのに。 「そうだなぁ、あのもふもふ毛玉、酷いよなぁ」 「ニーシャ、その気持ちは分かるぞ、もう誰も信じなくても良い。信じるに値しないな?」 「でも大丈夫だ、ニーシャ」 「お前には絶対に裏切らないとっておきの男がちゃんといるだろう?」  しかも二人も。  本当に普段はどうしようもなく仲が悪いクセに、ニーシャを我が物にする選択肢が限られ、しかしその選択肢を取りさえすれば確実に関係を結べると分かった途端これだ。極悪な方向に息がぴったりすぎる。  このまま二人に好き勝手されるのか、とニーシャがげんなりしたところに、 「ん?」  ヴォン! と小さく唸る音が響いた。音のした方へ顔を上げると、空中に小ぶりな魔方陣が浮かんでいる。 「うん? なにあれ?」 『すみません~』  響いたのは、今話題に出していたばかりの猫獣人の声。 『先ほどの資料に一部誤りがありましたので、最新のものと差し替えを~』  聞こえるのは声だけだ。音声通信魔法らしい。  と思ったら、その陣を通して、一枚の紙片が現れた。  ひらひらと舞い降りる用紙を見て、後出しもいいところだとニーシャは吠える。 「ウルスさん! どういうことですかこれ! ただの詐欺じゃないですか!」 『ニーシャさん、すみません、私も自分のポリシーに反する行いは心苦しかったんですよ。でもこれ、国家規模の謀なので~』  個人でどうこうできる問題ではないのだろう。ニーシャだって同じような状況になれば、大きな権力の前には屈するしかないかもしれない。  頭では分かる。ウルスにだってウルスの生活があるのだ。自分のために犠牲にしてくれとも言えない。  でも。それでも。 『あと大変申し上げにくいのですが、国の最高機関が主体なので、詐欺も成立しないです。全部揉み消されるというか、そもそも違法なことは何もない扱いというか~』 「そ、それでも……! なんか、なんかもうちょっとこう、弁明とかしてくださいよ! ニャンダフル保険も所詮国家の犬ってことなんですね、がっかりです!」  悔しくてそう言うと、否定できませんねとウルスは溜め息を吐いた。 『実は弊社は元々王家と少々繋がりがあると言うか。あの、特殊条件だらけのニーシャさんをお客様としてお受けできるのは、弊社の企業努力もあるのですが、度重なるトラブルに対する保険金、実は、そのぉ、裏契約で国から拠出されておりまして~……ニーシャさんはその、かなり珍しい生まれでもありましたので……』 「ええぇっ!?」  まさかの事実にニーシャは目を剥いた。だが、ヴィスタの方はなるほどなぁ、やっぱりかなどと呟く。 「オレに国家予算使ってたってこと!?」 「ニャンダフルだけやけにニーシャに親身なプランを次々出せると思ったら、バックについてたのが王家とは」  それは売られもする訳だ。国はニーシャに散々金を使っていて、それはきっと投資でもなんでもなくマイナスをゼロに戻すためだけの行為で、だから今回ニーシャの身一つで国家、いや世界の安寧を図れるのならと今までの分を取り戻す意味も込めて生贄選定されたのだろう。  納得したくないけど、なんとなく流れは分かる。 『それに本当に余計なお世話でしょうけれど、ずっとニーシャさんをご担当させてもらいましたから、だからニーシャさんには自分の気持ちに素直になって頂きたくて』 「は? え、何の話です!?」  が、次のウルスの発言は意味がよく分からなかった。  ニーシャが今まで何かに素直にならなかったことがあるだろうか。あったとして、それをウルスに話すようなことをしただろうか。  しかし詳しいことは聞けなかった。 『えぇっと、ニーシャさん、本当は……っぁ、所長! いえ、何でも、お客様に確認の連絡を入れていただけです~』 「え、あ、ちょっ、ウルスさんん!?」  ブツン! といきなり通信が切れる。  どうやらこっそりと連絡を入れて来ていたらしい。 「何にしても後出しもいいところだな」 「ニーシャを与えればそれで安心だと思っているところが愚かしい」 「ニーシャをこんなに傷付けたその代償は別払いなんだけどな」  二人が不穏な会話を交わす。が、“けどまずはこっちが先”と胸を弄るのとは反対のヴィスタの手がニーシャの下履きの中に潜り込んで双丘の割れ目に触れた。 「ぎゃあ! つめっ、ヴィスタなにこれぇ」  そんなところに触れられるだけでもとんでもないのに、何か冷たくてとぅるんとしたものが宛がわれていた。  未知の感覚に竦み上がれば、ヴィスタが何でもない事のように告げる。 「ローションスライム」 「ローションスラ、は!?」 「ニーシャ、初めてだからしっかり濡らして、解さないと」 「いやいやいや、まって、スライム入れられてるの? あ、うそやだ、入って来てるぅ、あ、ヴィスタ入れないで」 「入れて拡げて慣らさないと、オレのを挿れられない」 「そっちも同意してないです!」 「でもしないと。今もほら」  鳩尾を撫で回される。 「魔力の配分が悪い。くらくら酔ったみたいな感覚があるだろ」  確かにそれはあった。軽い酩酊状態といって差し支えない。身体の熱も僅かに上がっていた。 「でも、あ、あう」  外から何かを受け入れたことのない小さな後孔が、それでもくぷんと異物を飲み込む。何とも言えない弾力と冷たさ、一緒に潜り込むヴィスタの長い指。 「ね、ヴィスタ、本当にこれじゃなきゃダメ? 他に方法、」 「じゃあついでにキスもしとくか?」 「え? むーーっ!」  後孔に感じる異物感だけでもいっぱいいっぱいなのに、次の瞬間唇も塞がれる。迂闊なニーシャはすぐに息継ぎで口を開いてしまって、易々と口内への侵入も許してしまった。  舌を絡め取られ、唾液を啜り上げられる。抵抗しようにも圧倒的経験値と体格の差で、ニーシャはヴィスタに適わない。 「んぅ、っぁ、ヴぃすたぁ、あっ!?」  しかもそうこうしている内にローションスライムはぐいぐいとナカを這い進んでいた。腸壁をぐにぐにと擦られる感覚に身体が跳ねる。 「気持ちイイとこあった?」 「ちが」 「でもスライムの感覚、気持ちイイんだよな? それとも一緒に入ってるオレの指がイイ?」 「知らな」  耐え難いと思うのに、同時に耐えたいとも強く感じる。  怖い、慣れない、気持ち悪いはず。なのに、与えられる刺激は底の方に何か可能性を秘めている感じがして、強く拒むことができない。 「ははっ、ニーシャ、可愛い。勃ってきた」 「うそ……!」 「嘘じゃないよ」  言われて視線を落とせば、いつの間にそこまでずり下げられていたのか、ニーシャのモノは確かに勃ち上がり始めていた。 「気持ちイイみたいで良かった。でもコイツにこれ以上ニーシャのナカを許す気はないから」 「あ……?」  ニーシャのナカでヴィスタの指がぐっと大きく動く。  何を、と思った次の瞬間、ナカでプチッとはぜる音がした。 「あ、あ、あぁあーーーーっ」  スライムが潰されたのだ。外側の膜が破れてその名の通り内側のローション成分が一気にニーシャのナカに広がる。 「あ、あぅあ」 「あぁ、ゴメン、これだけでイッちゃったか」  じゅわりとナカに広がり満たすぬるぬるとした感覚。受け入れ切れなかった分が、後孔からボタボタと落ちて床にシミを作る。  それだけでなく、ヴィスタの言う通りいきなりの刺激にニーシャは射精していた。 「あう! ヴィスタ、やめてぇ」  だらりと白濁を垂れ流す、達したばかりの先端をぐりっと弄られて半泣きでニーシャは制止した。したら、割にあっさりヴィスタはやめてくれて、ごめんなと眦に小さな口付けを落とされる。 「ニーシャ」 「え」  が、次は腰を持ち上げられた。 「ニーシャ、愛してる。ニーシャの魔力配分を均すためではあるけど、それよりもっと前提として、オレがニーシャのことを骨の髄まで愛してるからこうしたいんだって、それはちゃんと意識しておいてくれ」 「あ、あ、ヴィスタ」  いつの間にそんなに大きくしていたのか。  ローションでとろとろになった穴にずんぐりした先端を添えられる。 「なぁ、ニーシャ、ニーシャのハジメテをオレがもらうところ、アイツに見せてあげような?」  言われて、ディークラディアの存在を思い出してしまった。反射で視線がそちらに向けば、 「っ!」  あまりに真っ直ぐな眼差しがニーシャに向けられていた。  余すことなく全てを見られている。 「ほらニーシャ、ニーシャは頑張り屋さんだな、オレのをこんなに健気に飲み込んでっ」 「うぁ、あ、んんーーーーっ!」  見られている、見られている、見られている!  こんなに恥ずかしいところを、はしたないところを、セックスしているその現場を見られてしまっている。  羞恥にくらりとニーシャの頭が揺れる。  でも、下からとんでもない圧迫感が襲ってきて、そのどうしようもない刺激に意識は現実から離れることを許されなかった。 「あ、っぁ、挿っちゃ……!」  ずぷん! とニーシャの空洞がヴィスタの屹立に犯される。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加