お務め

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「下を脱いで」 「……」  おれは渋々言われた通りにし、上着を羽織っただけの姿になる。  厨房奴隷の服はシンプルな生成りのシャツだけど、日本のものより裾がずっと長い。だから、シャルワールっていう裾がすぼまったボトムスを脱ぐと、自然と前をはだけた〈彼シャツ〉みたいなスタイルになった。  アスランは椅子に座ったまま皿のアイスクリームをすくい、おれの乳首に塗りつける。 「ん……」 「ああ、こんなところにも薔薇の砂糖漬けが。残さず食べてやらないとな」  言うと、乳首をじゅっと吸う。冷たさで敏感になったところを、熱い口で含まれるのだから、たまらない。じゅるじゅると執拗に吸い続けるアスランに、おれは言った。 「……やることだけ、はやくやれよ……っ!」  夜伽専門のオメガが見つかるまで、お互い手っ取り早くSEXを提供する。そういう約束なのだから、こんなマニアックなプレイなんかいらないはずだ。 「そう色気のないことを言うな」  アスランは呆れたようにため息をつき、それから、口の端をいやらしく持ち上げた。 「それとも、我慢できないから早くくれ、というおねだりか? ならもうすこし可愛く言ってもらいたいものだな?」 「そんなわけねー――」  反論すると、スルタンは笑いながら〈おれの先端〉をスプーンで小突いた。 「んっ」  そそりたってしまっているのは、こいつがアルファだからであって、けして積極的にしたいからではない。  アスランは蕩けたアイスにスプーンの背を浸すと、おれの亀頭に押し当て、くるくると円を描いた。 「んん……っ」 「ああ、シロップが滲んできた」  アスランは笑みを滲ませて、恥ずかしいことを口にする。  おもむろに口に含まれた。 「んあ……っ!」  手を添えて、上下に扱きながら、巧みに舌を使われる。敏感になった先端を舐め回し、鈴口をこじ開ける。  かと思うと、根元まで深く咥え込んで、引き絞られた。  きつく、ゆるく、緩急をつけながら絶え間ない愛撫を施されて、おれの唇からは半分悲鳴みたいな声だけが漏れる。 「ひっ、んっ、あっ、やだ、やだって」  小姓は下がらせることができても、護衛はドアの外にいるはずだ。執務室の扉はしっかり作られているとはいえ、大きな声を出せば聞こえてしまうだろう。  おれは慌てて口元を押さえた。だけどそうすると、声で発散できない分、快感が体の中に閉じ込められてしまう。 「んっ、んっ、んっ」  声を堪えた分の快感が、涙になってこぼれ落ちる。それを目にしたアスランが、にやっと不敵に笑った。  じゅぶっじゅぶっと音も高らかに、注挿が激しくなる。 「だめ、も、出る、出ちゃう」  おれは声を抑えるのを諦め、スルタンの頭に手を伸ばす。ターバンがほどけて長い髪が露わになっても、スルタンは気に留める様子もない。 「あ、ばか、出ちゃう」  このままだと、口の中に――最後まで言葉にできないうちに、体が大きく痙攣して、体中の血液という血液が総て一点に集中した。 「あ、ああ……」  あとはもう、どうにもできない。まるで、仕留めた動物の血肉をすするみたいにアスランがおれの精液を吸い尽くすのを、為す術もなく見せつけられるだけだ。  ぐったりしていると、アスランの男らしい喉元が、ごくりと蠢いた 「ば……!」  射精のあとの倦怠感より驚きが勝って、おれは声を上げる。 「の、飲むとか、おま」  まともに言葉にもならない。  アスランはまるでお構いなしだ。見せつけるように唇の汚れを舐め取ると、しれっと言い放った。 「――甘い」 「うそ、つけ……!」  くっそ恥ずかしいことを、よくぬけぬけと。しかもそういう仕草がめちゃくちゃ絵になるから、また腹が立つ。さすが異世界の王というべきなのか。 「さあ、こっちも満足させてくれ」  おれがなにも言えずに空しく口をぱくぱくさせている間に、アスランが椅子に座ったまま前をくつろげた。  そこはもう、手を添えなくてもほぼ垂直にそそり立っている。  おれが机から下りておそるおそる跨がると、スルタンはにやりと笑った。  おれの腰に手を添えてると、深く突き上げる。 「ああ……っ!」  強すぎる快感に、おれの背は限界まで反り返った。  そんなつもりはないのに、さっきアイスクリームを塗りたくられた胸がスルタンの目の前に突き出される。当たり前みたいにスルタンはそこを口に含む。熱い舌でねぶりながら、腰を突き上げるのもやめない。ぐじゅぐじゅと柔らかい果物を喰らうときみたいな音が、一時も止むことはない。 「あっ、あっ、あっ、あっ、やだ、やだ、やだ――」  おれは、扉の向こうにいるだろう衛兵の存在も忘れて、はしたない声を上げ続けた。   「さて、仕事に戻るか」  散々おれをいいようにし終えると、アスランはそう言って身なりを整えた。 「くそ、すっきりした顔しやがって……」  おれの恨みがましい呟きに、アスランは楽しそうに口の端を歪める。まだぐったりしているおれの顎に指を添えて、顔をのぞき込んだ。 「充分楽しませたつもりだが? おまえはまだ足りないか?」 「そういう意味じゃねー!」  おれはアスランの手を振り払った。 「アルファとオメガは、生まれつきSEXの相性はいいんだよ。そういうふうにできてんの。そんだけ!」  好きに菓子を作らせてもらえるって条件じゃなきゃ、こんな絶倫変態野郎のいいようになんかされるもんか。  なんでおれはこっちの世界でも奴隷なんかに生まれ変わったんだ。どうせなら、こいつみたいなスルタンに生まれ変われば良かったのに。そしたら権力ふるいまくりなのに。  おれは散らばった服をかき集めて身に着けると、執務室をあとにした。
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