晴幸の煩悶★

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晴幸の煩悶★

 美代の視線に耐えられず、逃げるように書斎を出て、晴幸の部屋の前に立ったものの、襖を引くことを躊躇った雷斗は、部屋の前を行ったり来たり……暫く彷徨(さまよ)った後、漸く襖に手を掛けたが、襖を引けぬままもじもじしていると、それを見透かしたように襖が開かれ、大きな瞳に涙を浮かべた、可愛いらしい晴幸の顔が現れた。  バツの悪さに、瞬時顔を背向けた雷斗だが、静かに視線を戻して晴幸を瞶めた。一瞬、強張った表情は見せたが、晴幸も雷斗を()っとり瞶め、対峙したまま二人は沈黙で、瞶め合う瞳だけが妙に熱く絡まった。 「──酷いことを、言ってしまった。私が……悪かった」  無下に辛辣な言葉を浴びせてしまった謝罪を、雷斗が口にすると、顔を振って抱き縋った晴幸は、 「いいえ、晴幸の了見が狭いのです。大変恥ずかしく有りました──」  幼子のようにしゃくりあげて見せ、愛しさに堪らず、晴幸をしっかりと抱き留めた雷斗は、グイ──と身体で、晴幸を部屋へ押すと、就寝の為に敷かれた布団へ、抱き伏せてしまった。  羞恥(はじ)らいを見せ、身を捩った晴幸だが、雷斗の背中を掻き抱き、股に挟んだ腰を、大腿(ふともも)でガッシリと捉えた。 「先生が、何処ぞの女子にあ……あのような想いをと思い、晴幸は、堪らなかったのです──」  雷斗の胸に頬を擦り付け、深く息を吸い込むと、喉奥を震わせ、甘えた声で『嫌なのです』と洩らした。  晴幸の可愛い訴えに、愛しさが溢れた雷斗は、着物を脱がせてしまうと、自分も全裸になり、お互いの体温を楽しむように、暫し無言で抱き合った。 「物語の中での──たかが想像に過ぎぬことで有ろうが……」  語尾を甘い囁きに変えた雷斗は、接吻(くちづ)けを交わしながら、愛らしく、勃ち上がりを見せた其れを、優しく揉んで遣った。 「嫌なのです。先生の筆が綴った、艶めく言葉を──たとえ物語だとて、晴幸以外の者が胸に刻むなど、耐えられないので──す……」  言葉尻を喘ぎで乱した晴幸は、小さな尻を小刻みに振り雷斗を誘い、こうなることを予測し、準備されていたのだろう、油で潤わされた蕾穴へ、充分と勃ち上がった其れを誘い、雷斗は急勝(せっかち)に身体を進めた。 「あぁ──よもや、このような喜びも、何処ぞの女子が肉体(からだ)に刻むだなど、想像しただけで、晴幸は気も狂わんばかりなのでございます」  打ち付けて来る、容赦ない雷斗の肉杭に喜びを馳せ締め付けた。
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