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そして
レオはぼんやりしていることが多くなった。
さらに、甘栗を差し出しながら家の中を徘徊するようにもなった。
母の葬儀のために帰国していた谷香は、父親を心配してボランティア活動を中止し、日本にいるようになった。
だが、それも短い間だった。
滝香のあとを追うように、レオも逝った。
別れ際のベッドの上で、レオは枯れた手を持ち上げて言った。
「ほら……甘栗………。」
そして微笑んだ。
手が、落ちた。
カレイの胸で泣きじゃくる谷香に、カレイは言った。
「お義母さんは、お義父さんのおみやげを、きっと喜んだね。僕には見える気がする。」
「私も……見える…………。
お父さんもお母さんも、甘栗甘栗って……。
事あるごとに甘栗って、そればっかり……。」
「甘栗オと姫様だ。
素敵なカップルだ。」
谷香を優しく抱えながら、カレイは天井を向いて唇を噛んだ。
仏壇には、二人の並んだ写真が立てられ、線香の代わりに甘栗が供えられた。甘栗はいつも、レオ側に置かれた。レオが滝香にプレゼントできるように。
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