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甘栗オ
交際を申し込んだのは、滝香からだった。
「は、はじめて見た時……手弁当にとんかつソースを忘れた女子に、「そのまま食べてごらん、肉の旨味がよくわかるから。」ってフォローしているのを見た時から、す、素敵な方だなと見とれてまして。」
黒々としたひっつめ髪を撫でつけながら、滝香は告白した。
「え、本当に? 言われたことない。」
彼は照れて笑った。
それは、本当かも知れない。
もう30代なのに子犬のような黒目がちで、目尻は垂れ、鼻は丸く、唇は厚ぼったくて黒っぽかった。
若い女性好みのイケメンだとは、あまり思えない。
だが、滝香の目はどうかしていた。
たぶん、言動に見た素晴らしさが、彼に王子様の魔法をかけていたのだろう。
「素敵です!
れ、レオナルド甘栗オ様とお呼びしてもよろしいですか?」
「え? あの、その申し出、確認取りたい箇所が複数あって、何から訊いていいのかわからないんだけど。」
「な、なんでも訊いてください!
その、よければ、デ、デートでもしながら!」
彼 ーー 四妻田レオは爆笑してうなずいた。
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