交際

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

交際

 のっけはそんな感じだった二人だが、交際が始まって滝香の緊張が解けると、わりとフツーのカップルになった。 「もー! ぜったい絶対許さない!  記念日忘れるなんてありえない!!」 「わるかったって。  甘栗買ってやるから、許してよ。」 「え、本当に?  やだぁ、まるでねだったみたいー。」  フツーだったが、丸めこみが簡単すぎるのは、フツーではなかったかも知れない。  猫に鰹節、滝香に甘栗だった。  あ、ちなみに彼の名字の読みは『よつまた』だが、彼も滝香がはじめての彼女だった。色気づき始めた頃からさんざん「四ツ股」とからかわれてきたため、それに反抗して硬派を通してきたのだ。  今は、そんな過去に感謝していた。  寂しさに耐えた日々に、感謝できるようになった。  滝香のおかげだと、以前滝香に話したら、滝香は目を潤ませて言った。 「大変だったね。  私、喜んでいいのかな。」 「いいんだよ。  僕が良かったって、心の底から思ってるんだから。」  二人がはじめて結ばれた日のことだ。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!