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晩年 2
「おかーさーん、甘栗だよー!」
谷香は帰国するたびに近所のスーパーに寄って甘栗を買い、玄関先で言った。
「甘栗じゃなくて、谷香でしょ。」
「でもお母さんにとっては、甘栗のほうが嬉しいでしょ?」
「どっちも嬉しいわよ!」
「やっぱりどっちもなんだ。
そこは社交辞令でいいから、谷香だって言ってほしいんだけどなwww」
「谷香、それは無理だ。
甘栗と肩を並べられるだけいいんだぞ。
お父さんなんか結婚前、お母さんの部屋に遊びに行くたびに「待ってたよ甘栗オ~」って出迎えられてたんだからな。甘栗の化身扱いだったんだからな。」
「甘栗オって、なに?
デカプリオ?」
「お! お前にもお父さんがカッコよく見えるか。」
「それは~どうかな?」
谷香はいつも一緒に帰国してくるイケメン夫カレイを、チラリとふり向いて笑うのだった。
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