500円でお城のあるじ

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500円でお城のあるじ

 お風呂上がりのまったりタイム。パジャマ姿でベッドの上、ぽちぽちスマホをいじっていると、面白いものを見つけてしまった。 『お城売ります。5万円』  わたし知ってる! すごい過疎の村の古民家を、土地付きで安く売って、住人増やしたりするやつだ。お城なんかも売りに出されたりするご時世なのか。  自慢じゃないけどお城は好きだ。部屋の本棚には、ファンタジーもののラノベやコミックが並んでいる。当然、ゲームもファンタジーRPGがメイン。  スマホの画像には、高台の森に囲まれたいかにもな古城。ステキ! 近くには湖も見えるし、広い野原も含まれているみたい。やっぱり土地付きか!  高まるきぶんのまま、オークションっぽい画面を確認する。わたしのほかにも見ている人はいるみたいだけど、まだ入札はない。貯金をくずせば足りるけど、わたしには手が出せない理由がある。  1日に使えるおこづかいは500円。ママとの約束だ。500円で買えないコミックも多いけど、「それはお兄さんお姉さん向きだから。どうしても読みたかったら、もう1日考えて、2日目に買いなさい」とルールを決められている。  100日かー。待ってるあいだに売れちゃうんだろうなー。  あきらめまじりで眺めているうち、価格が変化した。 『5000円』!  ん? え? どういうこと?  なんだろう、やっぱりジョークサイトか何かなのかな?  そういえば、まえに月の土地の権利書を売るなんて話も耳にしたことがある。そういった、夢にお金を出すたぐいの話だったり? それとも古いお城の保全のために、お金を出しあうってことなのかな?  なめるようにページをながめる。でもやっぱり、どう読んでも見ても売るとしか書いてない。  どうしよう。10日分先に使っていいか、ママに聞いてみようか?  入札者はまだいない。いま買っちゃって、10日間おこづかいを使わなきゃ、同じことだよね?  迷いながらページを上下し、入札ボタンを何度も表示させるうちに、ふたたび価格が変化した。 『500円』!!  税込みか!? 貯金崩すどころか、今月のお小遣いの残りでも足りる!!  気付いた時にはポチっていた。 『おめでとう! あなたが城主です!』  ありがとう! 買ってしまった! お城!  かりに権利だけを買う一口城主みたいなものだったとしても、友達に「お城持ってますけど何か?」って自慢できる!  氏名記入のページに進んだ所で少し迷った。けれど、もしもの時はママに泣きつけばいいや。そのための弁護士だし。  蒼嶋(あおしま)メグライアン 12才、と。  生年月日は――  入力し終えた時点で、部屋が暗くなった。あれ? 蛍光灯きれたの?  あわてて辺りを見回すうち、だんだん闇に目がなれてきた。  あれ?……わたしの部屋じゃない。
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