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ミカエルと悪魔
上級の天使とされる四大天使のうちのひとり、ミカエルは、地上に降り立っていた。
眩い金色の睫毛に彩られた瞳は険しい。
目の前には黒い山羊の群――に見えるが、実際は下級の悪魔たちの群だ。
ミカエルは首元のショールを解き、構える。
ピンク色の布は、彼女の手に収まると本来の形――剣の姿に変わった。
剣は炎を纏い、ミカエルの一振りで悪魔たちを焼き払う。
炎から逃れた残党を屠ったのは、白うさぎ渾身の蹴りだ。
小さな白うさぎ――コレットは、自分の体長の数倍ある黒山羊の姿をした悪魔をキックで伸していく。
ミカエルの加護を受け、身体強化されているからこそできる技だった。
「この頃、下級悪魔たちの動きが活発ね」
コレットが倒した悪魔を踏みつけながら、ミカエルが呟く。
他の天使たちも人間界に現れた悪魔を粛清するべく、それぞれ対応に追われていた。
もちろん、その隙に攻め込まれないよう、ミカエル以外の四大天使が天界の守護にまわっている。
「さて、お前たちの主は誰?」
悪魔の喉元に剣を向け、ミカエルは冷ややかに見下ろした。
だが、脅されて答える悪魔ではない。
ニィ……と口元を歪め、ボソボソと何かを呟く。
「キュッ!」
コレットの鳴き声でミカエルは悪魔から飛び退いた。
それと同時に黒い靄が悪魔を包み、爆発する。
「助かったわ」
間一髪で逃れたミカエルはコレットを抱き上げ、辺りを見回した。
他の悪魔も同様に跡形もなく消えている。
「……次にいきましょう」
剣をショールに戻し、コレットを抱いたままゲートを開き焼け野原をあとにした。
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