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他の悪魔が関わっているとは思えないミカエルは、それ以上話を広げずにラファエルと別れた。
そのタイミングを見計らったかのように、別の天使が姿を現す。
長い銀糸の髪をゆるく結い、気怠げな雰囲気を纏った天使は恭しく頭を下げた。
「ご無沙汰しております、お姉さま」
「私はあなたの姉じゃないんだけど?」
一呼吸の間も取らず、ミカエルは言い返す。
「我が同志、ルシフェルの姉君なのですから、私にとっても姉のような存在だということですよ」
「まずはその胡散臭い話し方をやめて」
「はい、お姉さま」
にこりと笑う彼に頭を抱えたくなったミカエルだが、言い合っていても時間の無駄なので話を進めることにする。
「それで、ジル。あなたがわざわざ私のところへ来た理由を教えなさい」
彼――ジルこと、ラジエルは七大天使に数えられる天使のひとり。
座天使の長であり、秘密の領域と至高の神秘の天使と呼ばれることもある。
他の天使たちが知らない地上の様子を知り尽くしていると言っても過言ではない存在なのだ。
「メフィストフェレスの契約者と恋仲の娘――オトメ・ミユキ、彼女にかけられた死の呪いを眠りに変えた神がいます」
まわりくどい言い方になっているが、ほとんどの天使たちは人間の名前をいちいち覚えていない。
そのため、悪魔であるメフィストフェレスをからみた関係で説明している。
「ああ、やはり元は死の呪いだったのね」
「ええ、それほど強い妬みと恨みでしたよ。ヒュプノス様が眠りへ変えなければ、命はなかったでしょう」
眠りを司る神・ヒュプノス――死を司る神・タナトスとは兄弟であり、同一視されることもある。
死は永遠の眠りとも考えることができるからだ。
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