5人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
メフィストフェレスは、何も答えない深幸を見て笑ったまま口を開く。
「待ちましょう。深幸様、あなたが望みを口にしてくれるまで」
裂けた唇から赤い舌がちらりと覗いた。
「もうすでに長い時を待ちました。あなたが答えてくれるまで待つくらい、どうってことないですから」
そう告げたメフィストフェレスの体は、闇に溶けるように消えていく。
「ああ、最後に一つだけ。天使のような存在こそ、信用してはいけませんよ。奴らは我々悪魔よりよほど卑劣だ」
胸をざわつかせるような言葉を残し、メフィストフェレスの気配は完全に消えた。
残されたのは静寂と、闇と、目覚めない彼女だけ。
▽▲▽
メフィストフェレスに対する答えが出ないまま、気付けば一週間が過ぎていた。
美幸は変わらず死んだように眠り続けている。
彼女を見舞うため、病院に向かっていた深幸は公園の前で一人の少女に出会った。
陶器のような肌。金色の髪に紫水晶の瞳。人形のようなその少女は、白いうさぎを抱いている。
「あなた、ひどい匂いがする」
少女は眉間にしわを寄せ、深幸を見ていた。
「上級悪魔のにおいね。覚えがある」
紫水晶の瞳の中で炎が揺れる。
「悪魔――」
「そう、悪魔。私達天使の敵」
「天使?」
呟くように言った深幸の言葉に答えるように、少女――ミカエルの背に翼が現れた。
最初のコメントを投稿しよう!