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同時に、ミカエルの立っている場所に光が集まり、スポットライトの下にいるようだ。
光を纏った彼女の瞳は険しい。
「あら、悪魔だけじゃないわね。あなたとあなたに近しい人に呪いがかかってる」
紫水晶の瞳は、深幸を射るように見つめた。
まるで『何をしたらそんなに恨まれるの?』というように。
「呪い?」
「ええ、人間の言葉でわかりやすく言うなら『呪い』よ」
ミカエルがパチンと指を鳴らすと、深幸の心臓の辺りから禍々しい黒い鎖が現れた。
「呪いを可視化してみたわ。この鎖の先にいる人とあなたの二人が呪われている」
深幸は鎖の先に視線をやると、美幸が入院している病院の方に続いている。
「二人の人間があなた達を妬み、恨み、呪いをかけたみたいね。不完全だけど、タルタロスに至る呪いだわ」
タルタロス――ギリシャ神話で語られる奈落の神であり、奈落そのものとされる存在。
つまり、ミカエルは『死へと至る呪い』だと告げたのだ。
「あなたは神を信じていないでしょ。私の言うことも現実的でないと思っている。けれど、このままではあなたもあなたの大切な人も、タナトスの祝福を受けるでしょうね」
「つまり、どういうことだ?」
「人間にもわかるように言うならば、あなた達を待つのは死のみということよ」
ミカエルが言い換えると、深幸はごくりと唾を飲み込んだ。
悪魔や天使、呪いが現実的でないと思いつつも、一年も目覚めない美幸を見ている。
「人間は愚かだわ。他人を妬むだけで努力もせず、呪詛の言葉を紡ぐなんて。たまたま言霊に力が宿ったようだけど……」
興味なさそうにミカエルは呟く。
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