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「骨ばってて、やらかいとこ全然無くてもかよ」
「うん」
「……でもっ‼︎」
「なに?」
「今はまだ、キスだけだけどっ——」
勢いで、胸の底に捩じ込んでいた蓋が弾けた。押し込めていた思いが口をつく。
「——俺、おっぱい無いし、それどころか廉と同じの付いてるけど、それでも……それ見ても、俺とどうにかなりたいとか、思ってくれるの」
ベッドの上、座っていた膝にぽつりと染みが出来た。うっ、と嗚咽が漏れそうになる。
廉と深いキスをする度、熱くなった頭の片隅で考えていた。この先に進もうとした時、どうなるのか。
キスの快感を覚えてからというもの、体に変化が起きているのを必死に隠す時、廉にそんな素振りが無いのを見ると焦った。自分だけがやらしい気持ちになっているみたいで恥ずかしかった。
『その先』が訪れる雰囲気がなかなか無いことに、どこか一人焦っていた。
もしかして、廉にその気になってもらえないんじゃないか。もし、先に進んでも裸を見られたらどう思われる? そんなことを考えると不安で押し潰されそうで、気持ちを誤魔化すことに精一杯になる時もあった。
「楓、こっち向いて」
掛けられた声に反して、顔は益々下を向く。
すると、つむじにちゅっと小さく口付けられた。驚いて、思わず顔を上げる。
「可愛いよ」
「廉......」
「見た目がどうこうとかじゃなくて、俺、とにかく楓のこと好きなんだ」
膜を張っていた涙が落ちてクリアになった視界に、大好きな顔が映る。楓を捕える二つの瞳には、ひたむきな熱がこもっていた。
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