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そっか、と今度は楓が窓の外を見た。
「どした?」
「……なんか、十年の時の流れを感じてた」
「急に、なに。十年前なんて、俺はつい昨日みたいに感じるけどな」
「あっという間だったってのは俺も同じだよ。タイムカプセル埋めた時なんて、十年先の想像すら全然つかなかったのにな」
「そう? 俺はついてたよ」
「え、売れっ子小説家になるって?」
茶化すと、違うよと廉が笑う。
「十年後も、楓と一緒に来るって」
「……!」
急に車内の空調が暑くなったように感じて、楓はコートの襟元に押し込んでいたマフラーを緩めた。お構いなしに廉は続ける。
「あの時の俺らがタイムカプセルに入れたもの、多分一緒なんだよ」
「秘密にして入れたのに何で分かるんだ? もしかして見てた?」
いや、ちゃんと見た訳じゃない、と廉が肩をすくめる。
「同棲始めた頃、楓の本棚見て気付いた。楓、遼峰文芸部の部誌大事にとってるだろ。でも、あの年の秋号だけ無いからさ。十年前、なんか本みたいの持って来てるなとは思ってたから、ピンときた」
「よく見てるな」
「楓のことだけな」
素面でさらっとこういうことを言うところは、あの頃から変わらない。
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