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此処は夜だった。
静謐な夜だった。
正しさは夜に在った。
運命は夜に隠れた。
此処は夜だった。誰も居ない夜だった。孤独が蠢く、ただの『夜』だった。
そんな夜に、私は自決する事を考えていた。
電車の窓に私の顔が反射し、映る。
先は見えなかった。
堪えて嗚咽を発しても此処は夜だった。
誰も手を差し伸べてくれないのは知っていたのに、『夜』が痛い。辛い。
惰眠の風情に潰され本望を見失いそうな夜に、呪った。
憧憬の背が闇で掴めなかった。代わりに死にたいという自責が包む。
命の檻に囲われただけだと足掻く人の夜は醜い。
明日も夜が来る。きっと日は昇る。
そう信じていないとおかしくなりそうでたまらなかった。
いつかの感情は、今更大きな花を身につけ、甘い香りを漂わせる。
それがただ、綺麗で、儚かった。
夜に、生命が咲いた。僕はもう存在していないかもしれない一等星を眺め、夜を憂いた。
此処は、散るべき夜だったのかもしれない。
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