4.【※】

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 その千晶の目が何処となく恐ろしく感じ、霞が息を呑む。  けれど、ここで引いてしまえば何も変わらないと思った。  実際、ここで本気でないと嘘をつけば、ことは丸く収まるのだ。が、霞としてはそうはいかない。千晶の足かせには、なりたくないのだ。 「……えぇ、本気、です」  彼の目をまっすぐに見つめてそう言えば、彼は「……そっか」と言って肩の力を抜く。  どうやら、感じた恐怖は気のせいだったらしい。それにほっと息を吐けば、千晶は「でも、嫌だ」と告げてきた。 「俺は霞との婚約を解消しないよ。……俺が納得しなかったら、婚約関係は続行だよね?」  千晶は何でもない風に、さも当然といった風にそう言ってくる。  それに驚いて目を見開けば、彼は「俺、霞のこと好きだし」と世間話の一環とばかりに自らの気持ちを伝えてきた。 「……こんなときに、そんな冗談は――」  ――よしてほしい。  そう言おうと思ったのに、言えなかった。  霞の身体を背後の扉に押し付け――千晶がその唇をふさいできたからだ。……口づけだった。 「んんっ!?」  驚きからか、さらに大きく目を見開いてしまう。  そんな霞の気持ちもお構いなしに、千晶はうっすらと開いた霞の唇に自身の舌を差し込む。 「んんっ! んぅ……!?」  口内を蹂躙するのは、自分のものではない他人の舌。  その異常性に霞が身を震わせていれば、千晶の手が霞の後頭部を固定してきた。
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