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「仕事ばかりしていないで、遊びなさい!」
仙人にそう言われた。そういえば僕は働きっぱなしで、遊んでいなかった。
そのうち体を壊してしまった。仕事のしすぎだ。
仕事しなきゃ、っていうのが強かった。みんな頑張っているのに自分だけさぼるのは駄目だって。
「スローライフが大事なんじゃ。ゆったり過ごせ。昼から酒を飲んだっていいじゃないか」
仙人と僕は仲良しだ。けれど、どうしても仕事を考えてしまう。
宝くじが当たった。百万。それも貯金に回し、仕事しちゃう。
「ねえ、仙人様。僕どうしても仕事考えちゃうんだ」
「生きるってのは、仕事だけじゃない。喜びも楽意も必要なんじゃ。いいか、遊ぶことに躊躇するな。お前は十分頑張った。だから、一週間だけでもわしの国に来い」
そこで桃源郷に行った。そこでも仕事を考えていた。
けれど、ふと木に実る桃を見て、ああ旨そうだな、って思ったんだ。
仙人様はゆったり十年過ごしていた。僕は自給自足で十年過ごした。
それが良かったかもしれない。僕にとって桃源郷の十年はでかかった。
それから娑婆に戻り、仕事のオンとオフができるようになった。
仙人様に感謝したかったけど、仙人はもう桃源郷にずっと住み始めた。
また会える日まで。
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