二人の鮭

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 愛海の部屋で一晩過ごしたのは数日前だ。今晩も同じメンバーが集まり、リビングにあるテーブルの上も前回と同じようにお惣菜やおにぎりが並んでいる。 「店長さんが、よかったらってくれたんだよね。さすがにけんちん汁のテイクアウトはなかったけど」  ひよりが帰る用意をしている間、水瀬が残っていたおにぎりを愛海に渡してくれたようだ。おにぎりセットを注文したものの、予想外の展開で愛海も舞もあまり食べる時間がなかった。仕事中だったひよりはまだ夕飯にありつけていない。 「舞さん、大丈夫?」  舞を支えて愛海の部屋まで行ったあと、ひよりは階下のコンビニに買い出しに行き戻って来たところだ。その間、愛海はお湯を沸かして舞にお茶を入れてくれていた。お茶を飲んで落ち着いたのか、ソファに寄りかかる舞の顔色はいくらか良くなっている。  ひよりの問いかけに舞が頷き、続いて愛海が口を開く。 「舞さん、まさかと思うけど、最近の主食がプロテインバーだったなんて言わないよね?」 「……悪い」  舞の答えに、愛海はあからさまにため息をついてみせる。 「ダイエット中の女の子が貧血起こすのはよく聞くけど、決闘するために体を絞って貧血起こしたって初めて聞いたよ」 「確かにね」  言いながら、ひよりはキッチンでカップの味噌汁にお湯を注ぐ。味噌汁の具はほうれん草だ。その間に電子レンジに入れておいた食品が出来上がった音がする。愛海の家に来たのは二度目だが、広くて使いやすい。家主の愛海ほどではないが、勝手知ったるキッチンだ。 「はい、夕飯再開。ひよりはやっと夕飯だね。いただきまーす」  愛海は我先にと食事を再開させる。夜九時という時間にもかかわらず、愛海はから揚げに手を伸ばす。  ――愛海、もしかして気を遣ってくれてる?
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