かつおと昆布は余りもの?

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「太ちゃんとご飯食べるついでに、七夕見てくればいいじゃない」 「……はい?」 「私、その日は夕飯作らないから。太ちゃんによく言っておくから、一緒にご飯食べにいきなさい。大葉おむすびヒット御礼のボーナスよ」 「それなら福子さんも同じ――」 「私はきちんとボーナスもらってるもん。アルバイトはそうじゃないでしょ」 「そうですけど」  福子の採用区分はあくまでもパートだが、立場はかぎりなく正社員だ。水瀬の祖母・ツヤ子が定食屋をやっていた頃からパートとして勤務しており、水瀬が定食屋をおむすび屋に変更した際は正社員での採用を提案したそうだ。 『太ちゃんに何かあったら、ピンチヒッターはやるけどパートでいいわよぉ。まあ、うちのお父さんが退職したら正社員にしてくれっていうかもしれないけど』  そう笑って、水瀬の提案をあっさり断ったと聞いた。  福子はちょっとお節介で人間が好きな人だ。だからホームレスとなりかけたひよりを拾い、その顔の広さで住む場所も見つけてくれた。そんな福子だから正社員として拘束されるより、えんに主軸を置きながらも自由にあちこちに顔を出していろんなつながりを作りたいのではないかと思う。 「はい、決定! 急だし、最終日でいいわね」 「水瀬さんの都合とか」 「太ちゃんに予定なんてないわよ。せいぜい二ヶ月に一度、歯科チェックと髪を切りに行くくらいだもん。それも先月行ったばかりだし」 「……」  アプリでスケジュールを共有しているわけではないだろうに、水瀬のスケジュールを把握している福子に驚く。同時に、予定がないと福子に断言される水瀬が心配になってしまう。  ひよりは通学とアルバイトの他に、友人とご飯を食べに行ったり映画を見たりという予定がある。  仕事以外の予定がなくて、水瀬は平気なのだろうか。どうやって息抜きしているのだろう。
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