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何でもない冬場の昼下がり、僕らは、当然のように駅に向かう途中にあったファストフード店に入り、当然のようにコーヒー2つを頼んで、当然のように2階の窓際の席に着いた。
それからは、彼女は僕との会話を避けるように、スマホを胸の前に引き寄せ、しきりに触り続けていた。
そんな風にして、僕とは一切目を合わせようとしなかった。
僕はそれを見るなり、窓の外へ顔を向け、白く光る街並みをぼんやりと眺めていた。
目の前のコーヒーが、口をつけないうちに、どんどん冷めていく。
湯気の出なくなったそれを口に運びながら、僕はもう、彼女と会うのは今日が最後なんだと分かってしまった気がしていた。
何も話さないまま僕らは店を出て、そして別れた。
「それじゃ」と小さく言い合ったのが、彼女と最後に交わした言葉だった。
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