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椎名くんと私は高校で出会った。一年、二年と同じクラスになったよしみでちょっとずつ仲良くなったけど、いまだに椎名くんのことはよく知らない。
そもそも椎名くんが笑ったところをあんまり記憶していない。
彼の笑いのツボがさっぱり分からない。
「どういうので笑うの、椎名くんは。去年1笑ったの、何?」
「えー教えたくない」
「なんで⁉︎」
「それで思い出し笑いでもしたらどうすんの。去年の古いネタで今年の初笑いとか、最悪じゃね?」
椎名くんは真面目に変なことを言う。
「藤川は初笑い何だった?」
「覚えてないなー」
「マジで? 気にしないの?」
「気にしないよ。多分、ツイッター見てて誰か知らん人の投稿に笑った」
「そんなんで笑ったの⁉︎ もったいなくね⁉︎」
「いや、意味わかんないし」
「もっと初めてを大事にしろよ。ショックだわ。藤川がそんな知らん奴に初めてを奪われるなんて」
「誤解を招きそうな言い方やめて?」
「……ごめん」
椎名くんは深刻な顔で謝る。
「……ねえ、ちょっと、変な空気にしないで?」
私のツッコミを無視して、椎名くんは青い空を仰ぎ見る。
「ああ〜笑うって難しいな〜」
そんな真面目に悩んでんの、あんただけだよ。
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