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「いつも通りの様子だったんで、そんなに気にしていないと思っていました」
樹が言うと、雪代は微笑した。
「あれは照れ隠しです。樹さんが眠り続けている間、水沢様がいない時はずっと樹さんの様子を見ていましたよ。樹さんが目を開けられた時は、陰でひっそり喜んでもいました」
「そうだったんですか…」
太郎坊の意外な姿に樹は目を瞬かせた。
「ええ。太郎坊様だけでなく、黒耀様や琳様、雨翠殿、弥蜘様など、樹さんが関わった多くの方々が貴方の心配をしていたんですよ。
樹さんはもうただの人間ではありません。樹さんの後ろには強力な妖怪達が幾人もついています。ですから樹さんを攻撃するような発言を繰り返せば、烏天狗の一族ごとこれらの者達から目を付けられるようになるでしょうね」
雪代はにこりと碧に微笑んだ。しかしその目は笑っていない。碧は蒼ざめた顔で、こくこくと頷いた。
「もう一度ミツアシに忠告するよう、親父に言っておきます」
「それが賢明でしょう」
そう返してから、雪代は樹の方へ向いた。
「樹さん、私はこれで千尋様の元へ戻ります。あとはお二人でゆっくりとお話し下さい。それと碧様」
今度は碧に顔を向ける。びくりと碧の肩が跳ねた。
「申し訳ありません、少し言い過ぎましたね。私もだいぶ感情的になっていました。けれど樹さんは大事な私の弟子でもあります。また樹さんを責めに来るようなら、烏天狗一族に直接文句を言いに行きますよ」
「そんなことは俺がさせませんので、安心して下さい」
碧は雪代を見据え、言い切った。
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