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「お久しぶりだね、樹君」
扉の向こうから聞き覚えのある声がした。
「お久しぶりです、想さん」
声の主に樹は挨拶を返した。
「それにしても、すごいの建てましたね」
屋敷に入りながら、樹は事務所の社員である、穂群想に話しかけた。
「そうでしょ。涼と一緒に考えたんだよ」
「え、想さんと涼さんが設計したんですか」
驚いて樹は聞き返した。
俵涼も想と同じく事務所の社員で、経理や事務を行っている。
「設計ってほどじゃないけど、所長が自由にやっていいって言うから、二人で建築士さん達と話し合って決めていったの」
「そうだったんですね…」
周りをぐるりと見回しながら、樹は返した。
玄関を入ってすぐの所はロビーとなっており、中央にテーブルとソファが置かれている。壁沿いには幾つか大き目の観葉植物が飾られていた。
ロビーの両側には廊下が伸びており、それぞれ奥の方に二階へ上がる階段が設置されている。
「樹君、屋敷の中をあれこれ案内したいけど、まずは所長に挨拶しないとね」
「…ですね」
想は樹を伴って歩き出した。向かって右の廊下を進み、奥まで行くと上へ続く階段を上り始めた。
「なんかあまりにも会うの久しぶりで、緊張してきました」
樹がぼそっと言うと、想は吹き出した。
「今更所長に緊張?
今まで電話やsnsで連絡は取っていたんでしょう?」
「そうですけど、実際に会うのは三か月振りくらいですし…」
夜彌との戦いの後、樹は正式に水沢の事務所で働く事になった。しかし事務所の建物は夜彌に壊され、樹自体も大きな怪我を負っていたこともあり、入社は年明けからとなった。
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