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それから急いでドライヤーをかけて、服を着た。
シャンプーやボディソープが香りすぎないように部屋の空気を入れ替え、ベッドをきれいに整えたりして軽く部屋の整理をする。掃除は昼間したばかりだから問題ない。
顔はすっぴんのままでいいか悩んで、いつも泊まりに行くときくらいの軽い化粧はしておいたほうがいいかな、と化粧道具に手を伸ばしたところで、インターホンが鳴った。
残念、タイムアウトだ。
「おかえりなさーい!」
「ただいま」
姿を見せた理雄先輩は、白のカットソーを白のパンツにインしてカーキのリネンシャツを羽織るという、オシャレ上級者な格好で、ちゃんとプライベートのお出掛けモードになっている。
いや、画家Rio-Oモードかもしれない。
「すみません、急だったんですっぴんですけど」
「別に、お前のすっぴんなんて見飽きてる」
「見慣れてるって言ってせめて」
先輩は中に入って扉を閉めると、お土産の袋を差し出した。
「これ、要冷蔵だから、冷蔵庫に入れといて」
「わー、ありがとうございます。上がっていきます?」
「いや、いい。飯食いそびれて腹減ってるし、早く帰りたい」
「えー! 先輩がいなくて私、昨日からずっと淋しかったのに……」
「そうなの? でもここには飯はないんだろ?」
「冷凍食品くらいしかないですけど」
でもせっかく来たんだから、ちょっとくらい話がしたい。
コンビニとかでごはん買ってくればいいんじゃないかな?
そう思っていると、理雄先輩は少し考え込んでから、言った。
「それじゃ、一緒にウチに来るか?」
「えっ、いいんですか!?」
今日は日曜で明日は仕事だし、先輩も疲れているだろうから、家に誘われる可能性は考えていなかった。
その分喜びも大きくて、きっとその気持ちがだだ洩れだったんだろう、私を見下ろしていた先輩が、少し呆れたように笑う。
「お前、俺のこと好きすぎだろ」
「もちろん、大好きですよ!」
「あっそ」
理雄先輩は大きな手で私の頭を撫でる。
目の前を覆う頑丈そうな手首の向こうにある、愛情のこもった穏やかな表情を見て、幸せだ、と実感する。
その伝わってくる愛情が、先輩にとっての恋愛感情だったとしても、不思議とそれは、心地の悪いものではない。
「最近、すげー思うんだけど」
「はい」
「お前、猫だと思ってたけど、犬みたいだよな」
「ペット枠?」
〈完〉

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