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主任から教えてもらった、きみの検査日。
開始時間の十分前に生物科の講義棟に行くと、四種の先輩が一人と、もうひとり知らない学生(四種以外の先輩だろう)しかいなかった。
「おはよう。見学なんだって? 気合入ってるなぁ」
「おはようございます。特別扱いしてもらった感じで、申し訳なさもありますけど」
「にしたって、主任がオッケー出すなんてよっぽどだぞ。よっぽど気に入ってるか、楽しいオモチャを見つけたか」
「思いっきり後者じゃないですか」
あの人、やっぱりろくでもない。
「いや、だってな。よくアレを見る気になったよな、って今も話してたんだけど」
先輩はもう一人を見る。二人は頷き肩を竦めるジェスチャーをシンクロさせた。
「リンカなら見ないよりは見といたほうがいいとは思うけど―キツいよ、色々」
「……覚悟は、してきました」
主任にも事前連絡をしたところ、日程を教えた張本人だと言うのに止められた。自分も検査に携わるけれど、内容に口出しする権限は持っていないと。だから僕が嫌な思いをすることもあると。言葉をそのまま借りれば、クソみたいな内容だから、と。
それらを聞いた上でここに来たのだ。何かあったとしても僕の責任だ。
「途中で無理そうなら言ってな。おれたちでも誰か他の人でもいいから。離脱するやつも、たぶんいっぱい居るし」
「分かり……ました。あの、そんなにキツいって、どういう」
「うーん。口で言うより」
先輩は空を仰いで、
「見たほうが早い」
それだけを口にした。
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