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翌朝、駅に行くと青野が待っていた。
昨日あんなめにあったのに、ちゃんとこうして迎えに来てくれるなんて、やっぱりこっちの青野も誠実なやつなんだろう。
(そう、誠実……)
だからこそ、俺も誠実に返さないといけない。
もっとも、これから俺がやろうとしていることが誠実かどうかは判断に迷うところだけれど。
昨日と同じく、ナナセは「じゃあ、お先〜」と行ってしまう。ポンと肩を叩いたのは、きっと「仲直りしなよ」ってことだろう。
うん、仲直り──とは違うけど、これからちゃんと青野に伝えようと思う。
「よう」
「おはようございます」
「あのさ、昨日はごめん。暴力をふるうとか最低なことをした」
「……そうですね」
青野は、わずかに目を細めた。まるで俺の本心を探ろうとしているかのようだ。
「それで、あの……それで、なんだけど」
さあ、ここからが勝負だ。
がんばれ俺! 自分なりの「誠実さ」を示せ!
「あの、俺──俺さ、もうお前とは付き合えない!」
まずは、まっすぐ目をそらさずにそう伝えた。
「ほんとごめん! でも俺、お前のことを恋人としては見られなくて!」
青野の緑色の目に、俺が映っている。
すごい、めちゃくちゃ必死。ちょっと自分でも引くくらい。
「とにかくごめん、別れよう!」
「……」
「これからお前は好きにしていいから! 他の子とも、その──付き合ったりしてもらって構わないから!」
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