第2話

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第2話

 かくして俺は青野との恋人関係を解消した。  感想? なんだろうな──強いて言うならおかしな感じ?  まず、悲しみみたいなものは一切ない。だって、俺にとって青野はあくまで「妹の彼氏」だから、恋人云々言われてもいまいちピンとこなかったし。  そのくせ、罪悪感みたいなものはいっぱしにある。そのせいか、今朝の別れ際の青野の姿が、なかなか頭から離れてくれない。  身勝手な俺を、容赦なくなじったあいつ。  やがて深くうなだれてしまったあいつ。  「先に行け」と俺を追い払ったあと、ひとり駅に立ち尽くしていたあいつ。  あのとき、下りのホームに向かう途中、何度も「引き返そうか」って考えた。「やっぱり今のナシ、俺ら今までどおり付き合おう」って。  けど無理だ。そんなの不誠実すぎる。そうじゃなくても、こっちの世界の俺は相当ひどい恋人だったらしいのに。  だから、これでよかったんだ。あいつはいいやつだしモテそうだから、そのうちお似合いの相手が見つかるはずだ。  神様、どうか次のあいつの恋人は誠実な人でありますように。少なくとも、本人が「尻軽クソビッチ」なんて罵りたくなるようなヤツじゃありませんように。  ──なんてことを考えているうちに午前の授業がひととおり終わり、みんな大好き昼休みが訪れた。  ああ、腹減ったな。今日は弁当がないから学食だ。  元いた世界では、昼休みは親友の八尾(やお)と過ごすことが多かったんだけど、こっちの世界の八尾は現在休学中。なんでもバイト先で骨折して、入院しているらしい。つーか、こっちの八尾は俺の親友のままなのかな。まさか、青野みたいに関係性が変わったりしていないよな? 「なあ、今日どうする?」  ちょうど、後ろの席の山本が立ちあがる気配がした。 「そりゃ、学食でしょ」 「だよなぁ、『唐揚げデー』だしなぁ」 「んじゃ行きますか」  おお、ナイスタイミング!  ここぞとばかりに、俺は勢いよく振りかえった。 「俺も混ぜて!」 「えっ、星井も?」 「めずらしいな」 「青野とメシ食わなくていいのかよ」 「ああ、ええと……青野とは別れたから」  とたんに、山本を含めた周囲の連中が「えええっ」とどよめいた。 「マジで!? 別れたの!?」 「う、うん、まぁ……」 「そっか……青野でもダメだったか」 「お前にしてはめずらしく長く続いてたのになぁ」 「青野くん、落ち込んでないかな」 「お前のわがまま、めちゃくちゃ叶えてやってたのになぁ」  ──すごいな、みんな青野に同情的だ。  ほんと何してくれてんの、こっちの世界の俺。誰もお前のことを心配していないんだけど。 「それじゃ、久しぶりにこのメンバーで行くか」 「唐揚げいっぱい食って元気だせよ」 「まあ、星井はそろそろ反省したほうがいいよな」 「それそれ! このままだとお前、いつか本当に刺されるぞ!」  励ましとお小言をくらいながら、4人で学食に向かう。  ちなみに、こっちの世界でも八尾は俺の親友らしい。よかった、あとでメールしておこう。あいつ、未だガラケーユーザーだからメッセージアプリ使ってないんだよな。
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