第2話

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 西階段を一気に駆け上がり、ようやく一番上の踊り場に辿り着く。 「ここだ」  間違いない。さっきチラッと頭をかすめたのはこの場所だ。  なのに、いざこうして立ってみると、今度は戸惑いが芽生えてくる。 「ええと……このあとどうすればいいんだ?」  実を言うと、俺は未だに一昨日のことをほとんど思い出せていない。  さすがに、学校に行って授業を受けたことくらいは覚えているけど、そのあとの記憶は見事まっさらなまま。つまり、18時間くらい記憶の空白があって、そこから「いきなり朝! 別世界に来たぜ!」って状態なんだ。  そうなると、やっぱりその「まっさらな18時間」の間に何かが起きたんじゃないかって推測したくなるだろ?  で、その「何かが起きた場所」が、ここかなって考えたんだけど。 「うーん……」  まいったな。「何かありそう」って気はするのに、それ以上のことはさっぱり思い出せない。  いっそ、ここから転がり落ちてみるか?  映画や漫画とかではよくあるよな。なんらかの衝撃的な事故やトラブルによって「パラレルワールドに飛ばされました」的な── 「いや、無理だっての!」  そんなの、失敗したら大惨事だ。大怪我を負ったり、下手すれば命に関わるかもしれない。 「やめとこう」  だって、ほら! この西階段で「何かありそう」っていうのも、単なる俺の勘違いかもしれないし! もしかしたら、明日こそは目が覚めたら元の世界に戻っているかもしれないし!  そんな期待値薄めの淡い希望を胸に、俺は階段を下りることに決した。  ちなみに、ここ西階段は校舎の端にあるせいか、昼休みでも人の行き来があまり多くない。このあたりをうろついているのは、すぐ近くの教室に用事があるやつか、個人的な事情から誰かを呼び出すようなヤツくらいで── 「青野くん、来てくれてありがとう」  そう、こんなふうに誰かに「告白」するような── (……うん、青野?)  今、青野って聞こえてこなかったか?
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