第1話

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 ──以上が、今朝の登校時の出来事だ。  あれから5時間、さすがの俺もうっすらと現状を把握しつつある。  まず、ここは俺が知っているようで知らない世界だということ。  目の色が「緑」なのは、ここでは「当たり前」だということ。  青野行春は、妹のナナセではなく「俺」の彼氏らしいということ。しかも── (まさかの肉体関係有り)  怖い怖い怖い。なんでそんなことになってんだよ。  たしかに俺、外見はチャラそうだけどさ。  実際は童貞だし。それどころかキスしたこともねーし!  なのに、こっちの世界の俺は経験済み? しかも相手は男? 俺、今まで女子しか好きになったことがねーんだけど。 (なのに抱いたの? 青野を?)  ……ダメだ、想像できねぇ。ぜんっぜんムラムラしないし。  しかも、あいつの証言によると、昨日俺は「学校でヤリたい」とリクエストしたらしい。「お付き合い半年記念日」を理由にして。  嘘だろ、こっちの俺、そんな自由奔放な感じなの?  それじゃ、あまりにも外見どおりすぎるだろ! (いや、待てよ)  たしか青野は「そういうの気乗りしない」って言ってたよな。  その点は俺と同じだ。俺も、学校で事に及ぶなんてまっぴらだ。というか、そもそも青野とそういうことができるとは思えない。 (よし、一度話し合おう)  お互いの利害は一致している。俺が「やめよう」といえば、青野もふたつ返事で了承してくれるはずだ。
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