第1話

6/13
前へ
/191ページ
次へ
 それが甘い考えだったと思い知らされたのは、4時間目の授業が終わってすぐのことだ。  昼飯どうしよう、親友は欠席みたいだし──なんて考えていたところ、廊下側の席の女子に声をかけられた。 「星井―、青野くん来てるよー」  後ろ側の出入口に立っていた青野は、今朝以上に凶悪な顔をしていた。まるで俺のことを視線で()(ころ)そうとせんばかりだ。  やばい。これはやばい。  身の危険を感じた俺は「おー」と応じるふりをして、前の出入口から飛び出した。  そこからダッシュダッシュ、めちゃくちゃダッシュ。  で、なんとか旧視聴覚室に逃げ込んだ。ここは、仲のいい先輩が教えてくれた穴場で、めったに人が来ないから。  よし、これでもう大丈夫。昼休みが終わるまでここに隠れていよう──  そう胸をなで下ろしたところで、まさかの青野が登場、今に至るってわけだ。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

157人が本棚に入れています
本棚に追加