第5話

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「あ〜青野〜、お待たせ〜」  やばい、声が裏返った。  俺、下手くそか! 恥ずかしすぎるだろ! 「……は? なんで星井がここにいんの」  金髪ロングが振り返る。見覚えのある顔だ。たぶん俺と同じ学年の誰かだろう。でも、名前までは知らない。こっちの俺は、どうやら知り合いみたいだけど。 「いやぁ、ええと……だからさ、俺、青野と待ち合わせしていて」 「なんで?」 「あんたたち別れたはずだよね?」 「違うの? 別れてないの?」 「いや、それは、その……」  別れたには別れたけど──そう続けようとしたところで、慌てて口を閉ざす。  だって今、そんなことをバカ正直に答えたらどうなるか。「だったら関係ないじゃん」「部外者は口出しするな」「大事な話をしてるから、さっさと立ち去れ」──うん、間違いなく総攻撃を食らうよな。  けど、じゃあ、どうすれば……  焦った俺は、ふと思いついた(つたな)い嘘を勢いのまま吐き出した。 「俺たちよりを戻したから!」 「は……?」 「俺と青野! また付き合うことになったから!」  さあ、来い! これなら引き下がるしかないよな!?  けれども、数秒ほどの沈黙の後、返ってきたのはさらにドスを効かせた「はぁぁぁぁっ!?」だった。 「なにそれ聞いてない!」 「ふざけんな!」 「なにしてくれてんだよ、この泥棒猫が!」  いや、「泥棒猫」って。そういうのは、恋人がいる相手に手を出したときにぶつける言葉であって…… 「は? 由芽たちはこれから付き合う予定だったんだよ!」 「ほんとそれ!」 「由芽をなんだと思ってんの!?」  青野に向けられていたはずの女子たちの怒りが、一斉に俺に向けられる。  くそ、だから嫌だったんだよ、他人のケンカに口出しするのは。しかも、青野のときより当たりがキツいし。3倍返しや4倍返しなんてとっくに越えてるし。  つーか、青野も青野だ。なんで口を開けたまま突っ立ってんだよ。そりゃ、突然の嘘で驚いただろうけどさ、そろそろ我に返ってこっちに加勢してくれよ。 というわけで、今やすっかり()(めん)楚歌(そか)状態の俺。  そんななか、まさかのボブカット女子が振り絞るような声をあげた。 「もういい」 「へっ?」 「もういいから……みんな、星井くんを責めないであげて!」
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