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「お前っ……なんでここに!?」
すっかり声が裏返っている俺に対して、青野は小憎らしいほど余裕綽々だ。
「『なんで』って、もちろん用事があったからでしょう」
「用事ってなんの!?」
「そうですね……『あんたと一緒に帰る』といったところでしょうか」
いやいや、帰んねーよ! それ、断ったよな!?
「断られましたが、了承はしていません」
「嘘つけ。『わかりました』って言っただろ」
「それは『理解した』という意味です。了承したという意味ではありません」
くそ、この屁理屈野郎め!
「で、八尾さんと何をしていたんですか」
「ふつうにおしゃべりだよ。それ以外にあるかよ」
「そうですか……おしゃべりだけで1時間3分……」
「そんなのふつうだろ!」
「俺にとってはそうですね。……ただ、飽き性のあんたは違うとばかり」
──うん? どういうこと?
「俺と付き合っていたころのあんたは会話が30分も続かなくて、すぐに『そろそろやろうぜ』と俺のズボンのファスナーを……」
「うわああああっ」
ここが病院だということも忘れて、俺は大声をあげてしまった。
バカ! マジでバカ!
会計窓口のお姉さんが、ものすごい顔でこっちを見ている。
ごめんなさい。でも、それもこれも全部こいつのせいなんです。
「おま……お前、よくもこんなとこでそんな話……っ」
「大丈夫ですよ。どうせ誰も聞いていません」
「そんなのわかんないだろ。ほんとやめろよ、マジで」
とにかく来い、と青野の腕を引っ張る。
そこからひたすら早足で歩いて、病院の正面玄関を後にした。
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