序章~無~

3/4
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
『ソウダ、喰ワレタ』 『喰ワレタ』 『喰ワレテシマッタ』 『マタ、喰ワレタ』 『マタモヤ、喰ワレタ』  無の静寂(しじま)に響く、失った耳に届く、声。  一人のようで、多数のようで、似ているようで、似てないようで。 「また、喰われた?」 『ソウダ、喰ワレタ、【チカラ】ゴト』 『ソウシテ、【コイツ】ハ、【チカラ】ヲ得ル』 『自ラヲ、屠ル【チカラ】ヲ、喰ラッテ、強クナル』 『今度(コタビ)コソハトノ願イ(ムナ)シク』 『ソレデモ、祈ルノダ、コノ深淵ノ、【無】カラノ、開放ヲ』 『未来永劫ノ【虚無】ヲ、断チ切ル者ガ現レルノヲ』 『オ前ガ、ソウダッタラ、ヨカッタノニ――――!!』  光も、闇すらもない【虚無】に響く、怨嗟の声。  それは、己らを喰らった【コイツ】ではなく、同じく喰われたはずの、自分に向かう。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!