序章~無~

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 勝手に期待をして、勝手に絶望して。  失った耳ではなく、失った目ではなく、(ただ)一つ残された【魂】にぶつけられる怒り。 「………‥ぐぅっ!」  その責め苦に、失ったはずの喉が、呻く。  無防備に(さら)された【魂】の痛みに、喰われた時よりも激しい苦痛に、悲鳴を上げる。  これが、永遠に、続くというのか……?  教えられる前に、悟る。  その絶望の深さをも、感じる。  未来永劫の、【虚無】に、自分が囚われたことを、知る。  ……けれど。 「いつか……」  い……つ……カ……。 『いつか、いツか、表れル、ハず、ダ……【コイツ】ヲ滅ボス、【チカラ】ヲ持ツ、者ガ……』  見えない光明の糸に(すが)り、失ったはずの手を、指先を、懸命に、伸ばす。  見えない暗闇の触手が、失ったはずの体を、からめとる。    ……そのまま、彼は、虚しき【無】の深みに、沈んでいった。
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