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第二話
朝起きたら、世界が変わっていた。月並みのような表現しか当時六歳だった私には浮かばなかったけど、確かにその鮮烈な光景を前にして、私は呆然と胸の中にそう呟くしかできなかった。
離れた地方に住むおじいちゃんとおばあちゃんが何の連絡もなしに我が家に来ていて、お母さんも、叔父さんも、叔母さんも、みんな、黒い服を身に纏っている。やっぱり服は赤が好き、黒なんて着たくないわって、お母さん、あんなに言ってたのに。
あれ、と異変に気付いてしまって、私は口に出したのだ。
「お父さん、どこ?」
それが残酷な言葉だとも理解できない私は、つい凍てつくような無表情のお母さんに問いかけた。
刹那、氷が溶けた。
お母さんのブラウンの丸い瞳から、蛇口を捻ったみたいに大量のしずくが零れて、雨になって、嵐になって、お母さんは子供みたいに泣きじゃくった。
その瞬間、子供ながら悟った。
スーパーマンみたいにたくましかったお父さんが、たった一夜でお空にさらわれてしまったのだと。
くも膜下出血。誰もが予想しなかった、急死だったという。
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