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第三話
その後の記憶も、鮮明だった。
葬式場に着くや今、家では泣きじゃくっていたお母さんも、目を真っ赤に腫らして震える指先をこっそり包み込みながらも、親戚や友人たちに慎ましやかに挨拶をしていた。私もお母さんのところへ寄り添おうとしたが、ここで座ってなさい、と促され、とこぢんまりとしたベンチに一人軽く腰をかけていた。
いつもにこやかなおじいちゃんとおばあちゃんが弱々しくすすり泣いているのを、叔父さんと叔母さんが涙ぐみながら肩に手を添えている。
まだお若いのにお可哀想に。
娘さんも小さいから分からないでしょうね。
周囲からの囁き声に、思わずムスッと不貞腐れた。
分かるもん。知ってるもん。
お父さんは病気のせいで、お空に飛んでっちゃったんだ。
いじわるな神様に、さらわれちゃったんだ。
でも、みんなこそ知らない。
お父さんはスーパーマンなんだ。そう言ってたんだもん。
だから、きっと、きっと、きっと、きっと、
ぐちゃぐちゃな顔の私の涙を拭いに、戻ってきてくれる。
いじわるな神様をやっつけて、お空もこえて、ただいまって、大きな声で、帰ってくるんだ。
ねえ、そうでしょ、お父さん。
本当はね、怖いよ。寒いよ。痛いよ。苦しいよ。
私が辛い時は、真っ先に助けてやるって、言ってくれたよね。嘘ついたら、針千本のますって指切りしたよね。ねえお父さん、どうしてあんな箱の中で横になってるの。力の強いお父さんなら、拳一つで突き破ってみせるでしょ。
ねえお父さん、早く起きて。
みんなの涙を、止めに来てよ。
何度も何度も祈っても、箱は動かなかった。
箱は、動かなかった。
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